歯科材料・器械
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原著
コンポジットレジンとスメアー層を有する研磨象牙質との接着に関する研究 : 臨床操作の簡略化を目的として
伊藤 仁美早川 徹
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1995 年 14 巻 1 号 p. 8-16

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抄録
臨床操作の簡略化を目指して, スメアー層を有する象牙質にコンポジットレジンを接着させるボンディング剤の開発を試みた.水溶性の光重合開始剤である2-ヒドロキシ-3-(3, 4-ジメチル-9H-チオキサンテン-2-イロキシ)-N, N, N, -トリメチル-1-プロパンアミニウムクロリド(以下QTXと略す)をN-フェニルグリシン(NPG)と組み合わせて使用した.ボンディング剤を研磨象牙質面に作用させ, 乾燥後, 光照射により重合させた.プロテクトライナー(クラレ)を薄く塗布し, シラックスプラス(3M)を充塡し, それぞれを光照射により重合し, 37℃水中1日浸漬後の引張接着強さを測定した.また, 接着耐久性を調べるために, 4℃と60℃を交互に繰り返すサーマルサイクリング2, 000回後の接着強さも測定した.さらに, スクラビング法での接着強さも測定した.NPGエージェントを研磨象牙質面に60秒間塗布し, その後, 30秒間光照射すると, 平均値で約10MPaの良好な接着強さが得られた.また, NPGエージェントを15秒間塗布した場合には, 接着強さは平均値で約3〜4MPaと低い値であったが, 15秒間スクラビングでは約8MPaと向上した.いずれの処理でもスメアー層が残存しているのがSEMより確認された.15秒間スクラビングで処理した場合には, 2, 000回のサーマルサイクリング後でも接着強さは低下しなかった.
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© 1995 一般社団法人 日本歯科理工学会
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