抄録
予き裂導入破壊試験(SEPB)法を用いて, 金属焼付用陶材の破壊靱性値(KIC)を測定し, ポップイン予き裂の長さによる影響を調べた. その結果, R-曲線挙動を示すセラミックス, すなわち, き裂破面間の相互作用によって破壊に対する抵抗力が増加するセラミックスと同様に, この陶材においてもKICは予き裂の長さの増加とともに増加した. そこで, 相互作用力の影響を調べるために予き裂にダブルノッチを導入した. しかし, 予き裂の大部分を除いても, KICの減少は認められなかった. また, 別の測定からKICの測定中に予き裂の成長が起きていないことも確かめた. これらの結果から, KICが予き裂長さの増加とともに増加したのは, 破面間抵抗力が存在し, 予き裂先端から極近距離の所で既に最大に達しているためであると結論した. この抵抗力を除いた時, KIC=0.85±0.06MPm1/2と求められた. このような抵抗力もKICの一部であると考えれば, 金属焼付用陶材のようなセラミックスの破壊靱性値を予き裂導入破壊靱試験法で測定する場合には, 予き裂長さをできるだけ短くしたほうがよいと考えられる.