歯科材料・器械
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14 巻, 2 号
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原著
  • 乾燥したキトサンフィルムの機械的性質について
    伊藤 充雄, 新納 亨, 森 厚二, 横山 宏太, 竹内 勝泉, 中山 優子, 山岸 利夫
    1995 年14 巻2 号 p. 175-180
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
     キトサンフィルムは弾性体であることと, 生体吸収性であることの両者が大きな特徴である. キトサンフィルムは, 乾燥すると非弾性体となるが吸水することで再び弾性体とすることができる. このキトサンフィルムに練り込んだハイドロキシアパタイトから, Ca成分がどの程度溶出するかなどが使用上重要である.
     本研究は乾燥時のキトサンフィルムに添加したハイドロキシアパタイト量と収縮量, 硬さ, 引張強さ, 伸びについてと, Caの溶出量の関係について検討を行った. 結果は次のようであった.
    1. 乾燥時の収縮量は, ハイドロキシアパタイトの量が多くなるほど小さくなった.
    2. 硬さは, ハイドロキシアパタイトとキトサンゾルの比が4/11のとき最も大きくなった.
    3. キトサンだけのフィルムの引張強さは, ハイドロキシアパタイトを練り込んだ場合よりも小さかった.
    4. 伸びは, ハイドロキシアパタイトとキトサンゾルの比が2/11のとき最も大きかった.
    5. Caの溶出量はハイドロキシアパタイトとキトサンゾルの比が4/11のとき最も大きかった.
    6. 乾燥後, 生理食塩水中で湿潤したキトサンフィルムは弾性を有していた.
  • 土生 博義, 内田 博文, 田辺 直紀, 森 隆宏
    1995 年14 巻2 号 p. 181-185
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
     グルタルアルデヒド溶液中にアルジネート印象体を30分間浸漬後, 2, 5, 10%のCaCl2, K2SO4, ZnSO4溶液により30秒, 1, 5分固定し, 得られた模型の表面粗さとうねりを測定した. また, 石こうを溶解したスラリー液の効果も検討した.
     CaCl2, K2SO4は, 濃度が高く時間が長いほど模型の表面粗さを改善したが, 印象の収縮に起因する凸方向へのうねりが増加した.ZnSO4は濃度と時間の影響が小さく, 固定効果が最も高かった. 臨床的な方法として, スラリーによる1分間の固定処理が有効であった.
  • -比較的結晶性の低いアパタイト-
    岡崎 正之, 高橋 純造
    1995 年14 巻2 号 p. 186-192
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    2ステップ方式フッ素供給方法を採用することにより, 比較的低い結晶性を有するフッ素化アパタイト(H-FAp, F-HAp)を60℃, pH7.4で合成した. 両不均質系アパタイトのフッ素含有量は, ほぼ同じ値を示し, 均質系フルオロアパタイトの約半分の値であった. X線回折による同定では, (300)回折線は比較的広がったピーク幅を示し, 両不均質系アパタイトの間には, きわだった差は認められなかった. しかしながら, 走査型電子顕微鏡(SEM)による観察では, 両者の結晶形態はまったく異なり, SEM付属のエネルギー分散型元素分析計による表面分析では, F-HApに比べてH-FApのFピーク強度の方が高かった. また, 0.5M酢酸緩衡溶液(37℃, pH4.0)中に1ヵ月間浸漬したところ, 見掛けの溶解度はH-FApのほうが低かった. これらの結果より, 相異なる2層構造を有する不均質系フッ素化アパタイト結晶, すなわちハイドロキシアパタイトの表層をフルオロアパタイトの覆った結晶(H-FAp)と, 逆にフルオロアパタイトの表層をハイドロキシアパタイトの覆った結晶(F-HAp), を生成していることが示唆された.
  • 渋谷 昌史, 大澤 雅博, 松元 仁, 久恒 邦博, 安田 克廣
    1995 年14 巻2 号 p. 193-197
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    急速加熱型石膏系埋没材の膨張量に及ぼす加熱開始時期(練和開始から30, 40, 50, 60および120分)ならびに加熱速度(急速加熱, 室温から10℃/minおよび20℃/min)の影響について, 円柱状試片(10mmφ×50mm)を用いて検討した.加熱開始時期は, 加熱膨張量に影響しなかった.しかし, 硬化膨張の増加に伴って, 総膨張量は練和開始から約50分まで増加した.加熱膨張量に及ぼす加熱速度の影響はほとんどみられなかった.急速加熱の場合, 膨張曲線は, 石膏の脱水, クリストバライトおよび石英の変態に伴う膨張を示した.
  • -IRおよびWDXによるライナーの組成分析と分類-
    廣瀬 英晴, 塩田 陽二, 松崎 誠, 宮崎 紀代美, 林 純子, 成川 雅史, 西山 實
    1995 年14 巻2 号 p. 198-204
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    ノンアスベスト鋳造用リングライナーを細分類し, 分類別の特性を明らかにすることを目的とし, まず組成分析を行った. 材料としては, セラミック系のノンアスベスト鋳造用リングライナー15製品を用い, 対照としてアスベストリボン3種を用いた.組成分析は, ATR法IRスペクトルおよびWDXにより行った. 類似のIRスペクトルパターンでノンアスベスト鋳造用リングライナーを5群に分類した. WDXによる各群の成分元素は, A群(Ca, Si, Al, Mg), B群(Al, Si, Ca, K, Mg), C群(Al, Si), D群(Al, Si, Ca or Zr)およびE群(Al, Si, Fe)であった. 一方, アスベストの成分元素はSi, MgおよびFeであった. これらの結果より, A, B, C, DおよびE群をそれぞれロックウール系, セラミックファイバー系(低温用), 同(標準用), 同(低温用〜標準用)およびカオリン系と同定した.
  • -添加剤の影響について-
    箕浦 正孝, 寺岡 文雄, 北原 一慶, 高橋 純造, 野首 孝祠
    1995 年14 巻2 号 p. 205-212
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究では, マイクロ波重合による義歯床の適合性の向上を目的として試作した注入式FRPフラスコ内の石こう温度に関しての基礎資料を得るためにα半水石こうに種々の添加剤を加え, またマイクロ波出力を変えることでこれらの条件がフラスコ内石こう温度に与える影響について検討を行い以下の結論を得た. 1. 本実験は, 光学的な手法で温度計測を行っているため電子レンジ内の強磁界中での連続的な計測が可能となった. マイクロ波照射時に急速加熱と熱伝導の影響を受ける石こうの温度分布を正確に把握するためには, 光ファイバサーモメータによる計測が有効であった. 2. α半水石こうに導電物質を添加することで, その添加量にほぼ比例してマイクロ波照射時の石こう温度を上昇させることが可能となった. 3. 500W照射時と比較して90W照射ではマイクロ波による石こうの急速加熱が緩和され, 口蓋部と辺縁部での温度差が少ない均一な温度上昇を示した.
  • 菊地 久二, 沈 凌, 湯田 雅士, 松平 修一, 西山 實
    1995 年14 巻2 号 p. 213-218
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
     チタンおよびチタン合金を用いた補綴物の接合には, チタンろう材によるろう付が望ましい. そこで, ろう付を行うためのチタンろう材について, その組成およびろう付強さを測定した.組成分析には波長分散型X線マイクロアナライザーを用いた.ろう付方法は, 純チタン棒(JIS3種)を用いて, 赤外線ろう付器によりアルゴンガス雰囲気中で行った.
     その結果, 現在市販されているチタンろう材は, Ti, Ni, Cuなどからなり, その構造はTiとNi-Cu合金を積層した積層ろう材であった. ろう材組成は, Ti50〜67 wt%, Ni17〜30 wt%, Cu16〜20 wt%の範囲であった. これらのろう材のろう付引張強さは, 392〜516 MPaの範囲の値を示した.
  • 寺岡 文雄, 高橋 純造
    1995 年14 巻2 号 p. 219-224
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
     孟宗竹を200℃で20 mmHgの減圧下で抽出した成分(竹エキス)を用いて, Staphylococcus aureus (S.aureus), Streptococcus mutans (S.mutans)およびCandida albicans (C.albicans)に対する抗菌性と殺菌性および急性経口毒性試験などを行い, 歯科への応用について検討した. 抗菌性と殺菌性は最小発育阻止濃度(MIC)と最小殺菌濃度(MBC)を求め, 急性経口毒性試験はマウスに2,000 mg/kgの用量で強制単回経口投与して行った.
     竹エキスのMICはS.aureusの場合には5%, S.mutansでは0.625%およびC.albicansでは2.5%であった. 竹エキスのMBCはMICとほぼ同じ値であり, 殺菌性も認められた. 竹エキス濃度が5%程度で各菌に対して抗菌性と殺菌性が得られた. 竹エキスの成分分析を行ったが, 40種類以上の化合物からなる混合物であり, 主にフラン系とフェノール系の化合物であった. マウスを使って竹エキスの急性経口毒性試験を行ったが死亡例はまったくなく, 剖検によっても異常は見られなかった. また, 竹エキス中に砒素, 鉛および水銀は検出されず, 従来の消毒剤や殺菌剤と比較して安全に歯科の器械器具および材料に使用できる可能性が示唆された.
  • (2) 市販硬質・超硬質せっこうの評価
    大谷 伸之, 赫多 清, 宮川 行男
    1995 年14 巻2 号 p. 225-239
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
     11種の超硬質せっこうを含む21種の市販模型用せっこうの耐チッピング性について, 先に報告した2種の試験法を用いて定量的に評価した. これらの試験法の1つは, 回転型メタルソーで切断したときに生じるチッピング部の平均チッピング幅, 最大チッピング幅を測定する方法であり, もう一方は, 回転型メタルソーで破壊することなく切断可能な最小の厚さを測定する方法である.
     得られた平均チッピング幅, 最大チッピング幅そして切断最小厚さは, それぞれ製品間で有意な差があった. また, 平均チッピング幅と最大チッピング幅については, 超硬質せっこう群と硬質せっこう群との間において有意な差があった. しかし, 切断最小厚さについては, 2群間で有意な差は観察されなかった.
     平均チッピング幅, 最大チッピング幅, 切断最小厚さの各測定値の間には, それぞれ有意な正の相関が認められた. さらに, 切断時間の対数と平均チッピング幅, 最大チッピング幅, 切断最小厚さの各測定値との間にもそれぞれ有意な正の相関が認められた. また, 試験片中に存在する余剰水分が, これらの歯科用せっこうの耐チッピング性に対して影響を及ぼしていることも示唆された.
  • 平林 茂, 平澤 忠
    1995 年14 巻2 号 p. 240-246
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
     我々は, すでに, リン酸基やカルボキシル基を有する機能性モノマーを含有する歯科用接着剤やグラスポリアルケノエートセメントの歯質接着における<フィチン酸 (PYA)-SnF2 >プライマーの有効性について報告している. しかし, このプライマーによる処理は, 二段階処理を必要とする. そこで, この処理ステップを簡略化するために, 10%のPYA水溶液とPYAに対して0.02〜0.5モル当量のSnF2を混合した4種の前処理剤を調製し, それらの効果を従来の<PYA-SnF2>プライマーと比較検討した. これら処理剤の効果は, Photo Bond®の牛歯象牙質およびエナメル質に対する接着強さ, および処理歯面のSEM観察により評価した.
     これら4種の歯質前処理剤で処理した象牙質およびエナメル質に対する接着強さは, 従来の<PYA-SnF2>プライマーに比較して低かった. 特に, エナメル質で顕著であった. これら一液処理剤の脱灰能は, SnF2の濃度の上昇とともに低下した. これら一液処理剤の場合, Sn2+イオンは溶液中ですでにPYAと反応してしまっており, その結果脱灰能の低下をきたしたものと思われた. そして, 生成したPYAとSn2+のキレート化合物は, 処理後の水洗により容易に洗い流されてしまい, 歯質表面には固定されないと考えられた. その結果, 一液処理剤の効果は, 二段階処理を行う<PYA-SnF2 >プライマーに比較して低下したものと推察される.
  • 後藤 隆泰, 若松 宣一, 亀水 秀男, 飯島 まゆみ, 足立 正徳, 幸田 起英, 土井 豊, 森脇 豊
    1995 年14 巻2 号 p. 247-252
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    予き裂導入破壊試験(SEPB)法を用いて, 金属焼付用陶材の破壊靱性値(KIC)を測定し, ポップイン予き裂の長さによる影響を調べた. その結果, R-曲線挙動を示すセラミックス, すなわち, き裂破面間の相互作用によって破壊に対する抵抗力が増加するセラミックスと同様に, この陶材においてもKICは予き裂の長さの増加とともに増加した. そこで, 相互作用力の影響を調べるために予き裂にダブルノッチを導入した. しかし, 予き裂の大部分を除いても, KICの減少は認められなかった. また, 別の測定からKICの測定中に予き裂の成長が起きていないことも確かめた. これらの結果から, KICが予き裂長さの増加とともに増加したのは, 破面間抵抗力が存在し, 予き裂先端から極近距離の所で既に最大に達しているためであると結論した. この抵抗力を除いた時, KIC=0.85±0.06MPm1/2と求められた. このような抵抗力もKICの一部であると考えれば, 金属焼付用陶材のようなセラミックスの破壊靱性値を予き裂導入破壊靱試験法で測定する場合には, 予き裂長さをできるだけ短くしたほうがよいと考えられる.
  • 三浦 康伸, 武田 昭二
    1995 年14 巻2 号 p. 253-264
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    動的抽出法による細胞毒性試験を確立するため, 10種類の金属材料を用いて, 細胞生存率に対する抽出条件の検討を行った.抽出条件としては, 試料の重さ (1.5 gと2.0 g), 旋回速度 (200 rpmと240 rpm), 抽出期間 (1, 3および5日間)および旋回時に用いる加速抽出 (アルミナ球あるいはジルコニア球上での抽出) の各条件であった. さらに, 得られた抽出液を0.22 μmのメンブランフィルタにて濾過した濾液についても, L-929細胞に72時間作用後の細胞生存率に及ぼす影響ならびに溶出金属量の測定を行った. その結果, 細胞生存率に対する試料の重さの影響は少なかった. 旋回速度および抽出期間については, それぞれ増加に伴って細胞生存率は低下した. また, 加速抽出条件に関しては, アルミナ球上での抽出のほうが, ジルコニア球上より細胞生存率の低下は顕著であった.
     以上の抽出条件の中で, 10種類の金属材料をアルミナ球上にて240 rpmで旋回抽出した場合, それらが細胞生存率に及ぼす影響は異なっていた. その影響の程度からして4つのグループに分けられた. すなわち, チタンおよびチタン(Ti-6Al-4V)合金のグループ, コバルトクロム合金, ニッケルチタン合金および316Lステンレス鋼のグループ, タイプIV金合金および金銀パラジウム合金のグループとニッケルクロム合金, 銀インジウム合金および銀スズ合金のグループであった. また, 濾液の細胞生存率に及ぼす影響は抽出液より小さく, 濾過による細胞毒性の減弱化が認められた.
     一方, 溶出金属量については, アルミナ球上にて240 rpmで5日間抽出した濾液中には, タイプIV金合金と金銀パラジウム合金では, 選択的な銅の溶出が認められた. 銀インジウム合金と銀スズ合金では, 亜鉛の溶出が認められた.ニッケルクロム合金, ニッケルチタン合金および316Lステンレス鋼ではニッケルの溶出が, コバルトクロム合金ではコバルトの溶出が認められた. 一方, チタンおよびチタン合金からの溶出は認められなかった.
     以上の結果から, 動的抽出による加速抽出の効果が得られる条件は, 試料の重さを1.5 gとして, アルミナ球上にて240 rpmで旋回抽出する方法であることが分かった.
  • -重合開始温度と添加剤との関係-
    箕浦 正孝, 寺岡 文雄, 北原 一慶, 高橋 純造, 野首 孝祠
    1995 年14 巻2 号 p. 265-269
    発行日: 1995/03/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
     本研究は, マイクロ波の選択加熱を利用して, 模型石こうと埋没石こうに温度差を与え, 粘膜面からの重合開始による義歯床の適合性の向上を目的としている. また, マイクロ波によりレジンが急速加熱されるため, 使用するレジンもマイクロ波重合法に適したレジンを開発する必要がある.
     そこで本論文では, 昇温速度と重合開始温度の関係を検討するとともに, 精製したメタクリル酸メチルに重合促進剤であるN, N-ジメチル-p-トルイジン(DMPT)と重合禁止剤であるハイドロキノン(HQ)を添加することによって重合開始温度の制御の可能性を示差走査熱量計(DSC)を用いて検討した. 得られた結果を以下に示す.
     1. 4種のレジンはいずれも昇温速度の増加に伴って重合開始温度は上昇した. 昇温速度が同じ場合の重合開始温度は, クイックアクロン, 精製MMA, HQを0.0050 wt%添加した 精製MMA, アクロンの順に高くなったが, HQを0.0050 wt%添加した精製MMAとアクロンの重合開始温度には差がみられなかった. 各レジン間の重合開始温度の差は, 昇温速度の影響を受けず一定であった.
     2. 精製MMAにHQを0.0050 wt%まで添加することにより重合開始温度は10℃上昇した.
     3. 精製MMAにDMPTを1.00 wt%まで添加することにより重合開始温度は35℃低下した.
     4. 精製MMAへのHQとDMPTの複合添加による重合開始温度への影響はそれぞれの単独添加時の影響と大差はなかった.
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