抄録
歯冠修復処置を想定した積層構造体の熱的性質を解明するため, 熱伝導率の異なる金銀パラジウム合金, 陶材および合着用グラスアイオノマーセメントを用いて作製した積層構造体の比熱容量および熱拡散率をクセノン・フラッシュ法によって測定し, それらの値から熱伝導率を算定し, 比較検討した.その結果, 異なる熱的性質の材料が積層構造をなすとき, 熱的性質のうち最も影響を受けるのは熱拡散率であり, 材料間の熱拡散率および熱伝導率の差が大きいものほど, その影響は受けやすかった.また, 積層構造体の熱伝導率は, 熱の入る側が, 熱の出る側の熱伝導率より小さいほうが, その逆の場合と比較して, 大きくなる傾向が認められた.