抄録
本研究は新しく樹立されたヒト歯髄細胞系LSCのヒト歯髄における毒性学的反応の評価における有用性を明らかにすることを目的とした.LSC, MC3T3-E1およびL-929細胞に対する4種レジンモノマーの相対的毒性をMTT法とPGE2放出法で試験した.
レジンモノマーはLSC細胞の増殖を濃度依存性に阻害した.LSC細胞における4種レジンモノマーの細胞毒性の順位はUDMA>BisGMA>TEGDMA>HEMAであり, L-929またはMC3T3-E1で得られたそれと類似していた.しかし, それらのレジンモノマーに対する感受性は用いた細胞系により異なっていた.MTT法においてLSCとMC3T3-E1細胞はレジンモノマーに対しL-929細胞より高い感受性を有していた.4種レジンモノマーはLSC細胞およびMC3T3-E1細胞におけるPGE2放出の促進を惹起した.この効果はレジンモノマーのより低い濃度で24時間曝露で生じた.LSC細胞におけるPGE2放出によるレジンモノマーの順位はUDMA>BisGMA>TEGDMA=HEMAであった.PGE2放出はレジンモノマーの刺激作用の感度の良い指標であることが示された.
以上の結果からLSC細胞は修復用歯科材料の生体適合性の評価ならびに歯髄における毒性学的現象の評価においてもすぐれた細胞系として有用であることが示された.