歯科材料・器械
Online ISSN : 2188-4188
Print ISSN : 0286-5858
ISSN-L : 0286-5858
14 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 青山 訓康
    1995 年14 巻3 号 p. 329-340
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    本実験では, 新たに改良を加えた試作遠心バレル研磨機の特性を理論的に評価し, さらに新しい歯科材料として臨床応用が高まりつつあるチタン鋳造体への適用を乾式メディアを用いて検討した. 試作機は回転数が100〜1,100 rpmまで可変可能であり, ターンテーブルとバレル槽の回転比は4.5:1に設定した. この比率で各回転数下においてバレル研磨を行ったときの加速度, 遠心力から研磨効率を計算すると, バレル槽内に発生する流動層は回転数に影響されないことが判明した. したがって, 回転数が大きいほど研磨効率も良好であると考えられた. このことは, 実験結果からも明らかとなり, 本実験で検討した3種類の回転数(500, 750, 1, 000 rpm)で比較すると, 同じ乾式メディア(NR-3)による30分間バレル研磨を行った後のチタン試験片の重量変化率は1, 000 rpmが0.47%と最も大きく, 以下750 rpmで0.17%, 500 rpmで0.06%であった.
     試作研磨機と乾式メディアを用い, #1500のエメリー耐水研磨紙で平滑な面を形成したチタン鋳造板に対してバレル研磨を行ったところ, NRT-6, NR-3は重量変化率が大きく, 表面粗さが増加し, 光沢度が低下することが認められた. 特に, NRT-6ではこの傾向が大きく, 粗仕上げ用のメディアとして有用であると考えられた. 一方, 球状のSAは重量変化率は小さいものの, 表面粗さの改善には効果が認められた. しかし, 光沢度には変化がみられなかった. 最終仕上げ用のTWG#12は重量変化率と表面粗さには影響しないが, 光沢度は著しく改善し, 30分間の研磨で230程度の光輝面が得られた. また, これらのメディアを粗仕上げから最終仕上げへと順次用い, カーボランダムポイントにより表面をいっそう研磨したチタン試験片に対して各30分間ずつバレル研磨を行ったところ, 最終的には表面粗さ(Rmax) 0.63 μm, 光沢度(Gs20°)441まで改善できることが認められた.
     以上のことから, 試作遠心パレル研磨機は高回転でも良好な研磨効率を保持し, 研磨作業の一助として有効な手段となり得ることが示唆された.
  • 佐藤 和子, 高桑 美知代, 大村 武雄, 佐藤 温重
    1995 年14 巻3 号 p. 341-347
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
     本研究は新しく樹立されたヒト歯髄細胞系LSCのヒト歯髄における毒性学的反応の評価における有用性を明らかにすることを目的とした.LSC, MC3T3-E1およびL-929細胞に対する4種レジンモノマーの相対的毒性をMTT法とPGE2放出法で試験した.
     レジンモノマーはLSC細胞の増殖を濃度依存性に阻害した.LSC細胞における4種レジンモノマーの細胞毒性の順位はUDMA>BisGMA>TEGDMA>HEMAであり, L-929またはMC3T3-E1で得られたそれと類似していた.しかし, それらのレジンモノマーに対する感受性は用いた細胞系により異なっていた.MTT法においてLSCとMC3T3-E1細胞はレジンモノマーに対しL-929細胞より高い感受性を有していた.4種レジンモノマーはLSC細胞およびMC3T3-E1細胞におけるPGE2放出の促進を惹起した.この効果はレジンモノマーのより低い濃度で24時間曝露で生じた.LSC細胞におけるPGE2放出によるレジンモノマーの順位はUDMA>BisGMA>TEGDMA=HEMAであった.PGE2放出はレジンモノマーの刺激作用の感度の良い指標であることが示された.
     以上の結果からLSC細胞は修復用歯科材料の生体適合性の評価ならびに歯髄における毒性学的現象の評価においてもすぐれた細胞系として有用であることが示された.
  • - 同種および異種材料の積層構造体について-
    井上 達也
    1995 年14 巻3 号 p. 273-280
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    歯冠修復処置を想定した積層構造体の熱的性質を解明するため, 熱伝導率の異なる金銀パラジウム合金, 陶材および合着用グラスアイオノマーセメントを用いて作製した積層構造体の比熱容量および熱拡散率をクセノン・フラッシュ法によって測定し, それらの値から熱伝導率を算定し, 比較検討した.その結果, 異なる熱的性質の材料が積層構造をなすとき, 熱的性質のうち最も影響を受けるのは熱拡散率であり, 材料間の熱拡散率および熱伝導率の差が大きいものほど, その影響は受けやすかった.また, 積層構造体の熱伝導率は, 熱の入る側が, 熱の出る側の熱伝導率より小さいほうが, その逆の場合と比較して, 大きくなる傾向が認められた.
  • 宮﨑 紀代美
    1995 年14 巻3 号 p. 281-292
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    表面処理したシリカの粉粒体の物性, すなわち, 密度, 比表面積および粒子径を表面処理状態の判定試料として用いることを考案し, その有効性について検討を行った. すなわち, γ-Methacryloxypropyltrimethoxysilane (γ-MPTS), Vinyltrimethoxysilane (VTMS)およびVinyltrichlorosilane (VCLS)の3種類の表面処理剤で液相法によって表面処理を行い, 遠心分離法で分離したシリカを用いて粉粒体の物性について検討を行った. さらに, 表面処理したシリカに対して, Tetrahydrofuran(THF)による洗浄および加熱処理などの表面処理に伴う処理を行って, これらが粉粒体の物性に及ぼす影響について検討を行った. その結果, 表面処理されたシリカの表面処理状態を示すパラメーターとして, 粉粒体の物性のうち, 密度および比表面積は感度が高く, 処理剤濃度の増加に伴う総付着量の変化, 洗浄処理による付着量の減少あるいは吸着状態の変化および加熱処理による吸着状態の変化を比較的鋭敏に反映したが, 粒子径は本研究の範囲内では感度が低く物性の変動量が少ないことが判明した.
  • 第1報 打ち抜きせん断試験による評価
    福田 秀昭, 宮入 裕夫
    1995 年14 巻3 号 p. 293-301
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    修復用コンポジットレジンの接着強さ評価試験法として, 咀嚼に伴う咬合力を想定した打ち抜きによるせん断試験を行い, コンポジットレジンと歯質との接着強さについて基礎的な検討を行った. 本研究で採用した打ち抜きせん断試験法は4種類の被着材に円筒状の窩洞を形成し, コンポジットレジンを充填した試験体を圧子により打ち抜き接着強さを求める試験方法である. その結果, 打ち抜きせん断試験で得られたせん断強さはエナメル質で最も大きな値を示し, エナメル質/象牙質, 象牙質の順に減少する.エナメル質/象牙質のせん断強さは, エナメル質単体に比べ化学重合型レジンでは45%, 光重合型レジンでは29%減少し, エナメル質を含んでいるにも関わらずかなり小さな値を示した. これは, 象牙質の接着面積がせん断強度低下に大きく影響しているものと考えられる. そこで, エナメル質/象牙質試験体についてせん断力が作用する場合について検討した. その結果, 計算で求めた見掛けのせん断強さは実験で得られたせん断強さとほぼ同じ傾向を示した. これにより象牙質の接着面積は見掛けの接着面積に比べ小さくなっているものと推定できる. また, 打ち抜きせん断試験片にはコンポジットレジンと象牙質との接着界面に引張応力の影響によると見られるギャップが観察され, このギャップが接着面積減少の要因となり強度低下を招くものと考えられる. このように, 本研究で採用した打ち抜きせん断試験法は, コンポジットレジンの接着特性を評価する有効な試験方法である.
  • 井上 義久
    1995 年14 巻3 号 p. 302-312
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は, 通気性の異なる2種類のチタン専用リン酸塩系埋没材を使用して, 全方向加圧型鋳造機で鋳造を行い, 鋳込率を評価したものである.純チタンにはJIS第2種のインゴットを使用した.鋳込率の測定にはメッシュパターンを用い, 計測法により鋳込率を算出した.鋳造機には全方向加圧型鋳造機(AUTOCAST-HC III GC社)を使用した.埋没材には2種類のリン酸塩系埋没材を使用し, 埋没条件, 焼却条件はメーカー指定条件に従った.鋳型温度は室温で鋳造を行った.鋳型直径が鋳込率に及ぼす影響についてはT-INVESTの場合, 25, 30, 35, 40, 45, 55, 65mmの7条件で, T-INVEST C & Bについては25, 35, 45, 55, 65mmの5条件について, 鋳型底面からパターンまでの距離の影響についてはT-INVEST, T-INVEST C & Bの両埋没材ともに10, 20, 30mmの3条件にて鋳造を行った.その結果, T-INVESTでは, 鋳型直径を増加した場合に90%以上の高い鋳込率を示した.鋳型直径と鋳込率の間には危険率1%で正の相関関係が認められた.また, T-INVEST C & Bでは鋳型直径の変化にかかわらず90%以上の高い鋳込率を示した.一方, 鋳型底面からパターンまでの距離の変化については鋳込率に大きな影響は与えなかった.これは鋳型底面と鋳造機の鋳型保持テーブルの不均一な接触により引き起こされたものと考えられる.これらの結果により, 全方向加圧型鋳造機における純チタンの鋳造性は, 鋳型の通気性が低いほうが鋳込率は高くなることが明らかとなった.
  • 土井 豊, 幸田 起英, 足立 正徳, 若松 宣一, 後藤 隆泰, 亀水 秀男, 森脇 豊
    1995 年14 巻3 号 p. 313-320
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    湿式法で合成した炭酸含有アパタイトを静水圧下で加圧成形し, 種々の温度で2時間加熱して焼結した.その結果, 炭酸を約8 wt%以上含有する試料では, 650〜750℃で2時間保持するとほぼ焼結が完了することが走査電顕像から示された.加熱に伴い試料から放出される炭酸ガス量をガスクロマトで定量すると, 焼結後においても各試料は, 初期炭酸量の約半分量を含有していることが示された.この焼結後に残留する炭酸含有量はIRで直接求めた値に近似し, 炭酸含有量11.8 wt%の試料の場合, その焼結試料は人骨の炭酸含有量に匹敵する約6 wt%前後の炭酸を含有していた.これらの結果より, 炭酸含有アパタイト焼結体は水酸化アパタイト焼結体にくらべ, より骨アパタイトに類似し, 骨補塡材として有用であることが示唆された.
  • 小林 郁夫, 土居 寿, 米山 隆之, 浜中 人士, 松本 茂, 久高 克也
    1995 年14 巻3 号 p. 321-328
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    チタン-ジルコニウム合金のもつ, 新しい生体用材料の候補としての可能性を明らかにするため, 力学的性質について検討した.引張試験ならびに光学顕微鏡観察により, 合金設計のための有益なデータを得た.25〜75at%のジルコニウムを含む合金は純チタン, 純ジルコニウムに比べておよそ3倍の強さを示した.この結果はこれまでに報告されている他の研究者等の結果と一致するものであった.チタン-ジルコニウムの相互の置換による固溶体強化や析出強化などによると考えられる強さの増加が認められたにもかかわらず, 良好な塑性変形が得られた.これらの結果から, チタン-ジルコニウム合金をベースとした新しい生体用合金の合金設計の可能性が示唆された.
feedback
Top