本実験では, 新たに改良を加えた試作遠心バレル研磨機の特性を理論的に評価し, さらに新しい歯科材料として臨床応用が高まりつつあるチタン鋳造体への適用を乾式メディアを用いて検討した. 試作機は回転数が100〜1,100 rpmまで可変可能であり, ターンテーブルとバレル槽の回転比は4.5:1に設定した. この比率で各回転数下においてバレル研磨を行ったときの加速度, 遠心力から研磨効率を計算すると, バレル槽内に発生する流動層は回転数に影響されないことが判明した. したがって, 回転数が大きいほど研磨効率も良好であると考えられた. このことは, 実験結果からも明らかとなり, 本実験で検討した3種類の回転数(500, 750, 1, 000 rpm)で比較すると, 同じ乾式メディア(NR-3)による30分間バレル研磨を行った後のチタン試験片の重量変化率は1, 000 rpmが0.47%と最も大きく, 以下750 rpmで0.17%, 500 rpmで0.06%であった.
試作研磨機と乾式メディアを用い, #1500のエメリー耐水研磨紙で平滑な面を形成したチタン鋳造板に対してバレル研磨を行ったところ, NRT-6, NR-3は重量変化率が大きく, 表面粗さが増加し, 光沢度が低下することが認められた. 特に, NRT-6ではこの傾向が大きく, 粗仕上げ用のメディアとして有用であると考えられた. 一方, 球状のSAは重量変化率は小さいものの, 表面粗さの改善には効果が認められた. しかし, 光沢度には変化がみられなかった. 最終仕上げ用のTWG#12は重量変化率と表面粗さには影響しないが, 光沢度は著しく改善し, 30分間の研磨で230程度の光輝面が得られた. また, これらのメディアを粗仕上げから最終仕上げへと順次用い, カーボランダムポイントにより表面をいっそう研磨したチタン試験片に対して各30分間ずつバレル研磨を行ったところ, 最終的には表面粗さ(Rmax) 0.63 μm, 光沢度(Gs20°)441まで改善できることが認められた.
以上のことから, 試作遠心パレル研磨機は高回転でも良好な研磨効率を保持し, 研磨作業の一助として有効な手段となり得ることが示唆された.
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