抄録
陰極として用いたチタン板上へリン酸カルシウム系セラミックスの薄膜コーティングを行うために, 新たに電解液中放電を応用した. チタン板(陰極)と白金箔(陽極)を, リン酸三カルシウムを過飽和に溶解させた5 wt%クエン酸水溶液中に浸漬し, 直流パルス電源に接続した. 印加電圧の上昇とともに陰極近傍で液中放電を生じ, それに伴い陰極にセラミックがコーティングされた. コーティングされたチタン板の断面のSEM像によると, コーティングの厚さは5〜10μmで母材への密着性は良好であった. 800℃で熱処理したコーティング後のチタン板をX線回折で分析した結果, ハイドロキシアパタイト, 炭酸カルシウムおよび酸化チタン(TiO2)のピークが確認された. したがって, 電解液中放電を利用してチタン板上へハイドロキシアパタイト様セラミックスコーティングの化学的な生成が可能であることが認められた.