歯科材料・器械
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14 巻, 6 号
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原著
  • 井上 義久, 黒岩 昭弘, 大野 孝文, 荒川 仁志, 杉藤 庄平, 米田 隆起, 堀口 英子, 林 春二, 五十嵐 順正, 伊藤 充雄, ...
    1995 年14 巻6 号 p. 605-612
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
     本研究は2種類の形態の湯口を基本とし, 全方向加圧型鋳造機で鋳造を行い, 鋳込率を評価したものである. 純チタンにはJIS第2種のインゴットを使用した. 鋳込率の測定にはメッシュパターンを用い, 計測法により鋳込率を算出した. 全方向加圧型鋳造機にはAUTOCAST-HC IIIを使用した.埋没材はリン酸塩系埋没材のT-INVESTを使用し, 埋没条件, 焼却条件はメーカー指定条件に従った. 鋳型温度は室温で鋳造を行った. 鋳型の大きさは直径45 mm, 鋳型底面からパターンまでの距離は10 mmで鋳造を行った.リング外ルツボから湯口までの距離は5, 10, 15, 20, 25 mmに設定した. 湯口の形態については円錐型と円錐台型を形成して行った. 以下に結果を示す.
     1. 溶湯の体積と比較して湯口の容積と表面積が大きい条件は, 湯口の形態にかかわらず, クルーシブルから湯口までの距離が増加するに従い鋳込率は減少する傾向が認められた.
     2. 溶湯の体積と湯口の容積が近似している条件では, クルーシブルから湯口までの距離の変化による影響は大きく現れなかった.
     3. 湯口の条件は鋳込率に影響を及ぼすことが認められ, 溶湯の体積と湯口の容積の比率が鋳込率に影響を与えることが考えられた.
  • 斎藤 設雄
    1995 年14 巻6 号 p. 613-628
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
     アルジネート印象材(2種)と硬質セッコウ(2種)の組み合わせによるセッコウ模型面の粗さ, 固定処理後の印象から得られた模型面の粗さなどの測定を行った. さらに, 固定処理後の印象面やセッコウ模型分離後の印象面, 使用材料などの元素分析, また, 固定液による生成ゲル重量の測定などから印象面の化学的安定性とセッコウ模型の面粗さとの関係について検討した. その結果, 以下の結論が得られた.
     1) アルジネート印象材と硬質セッコウの組み合わせにより模型面の粗さが異なり, 印象を水洗することにより粗さはいずれも低下した.
     2) 模型分離後の印象面のCa量と模型の粗さとはよく相関し, 模型の面あれは注入したセッコウの印象面への付着量に起因した.
     3) 固定処理にはカルシウム塩が有効で, 印象へのCa取り込み量の増加と模型表面粗さの低下とはよく相関する. また処理により印象のゲル化促進, 弾性歪みの低下, 離液による収縮等が認められた.
  • 吉田 隆一, 多田 麻美, 伊藤 芳秋, 三宅 壮平, 伊藤 正人, 瀬尾 育義
    1995 年14 巻6 号 p. 629-649
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
     5種の酸性水に30種類の組成の明らかな歯科用合金を3日間全浸漬したときの浸漬前後の合金表面の色差と重量変化率, ならびに酸性水のpHの変化量, ORP値の変化率を調べ以下の結論を得た.
     色差では銀合金で約25と大きな変化がみられた. 金合金では銀や銅を添加したとき6〜9となり, 白金やパラジウムを添加したものでは2〜6と小さかった. Ni-Cr合金では9〜23と大きかったが, Co-Cr, Ti合金では2以下と小さかった. 重量変化率では銀合金で-0.3〜-0.7%と大きかった. 銀合金では-0.12%以下となり小さかった. Ni-Cr合金では0.27%, Co-Cr, Ti合金で0.02%以下であった. pH変化量では銀合金で約3中性に近づけた. 一方, 金合金では0.1〜0.4と小さかった. Ni-Cr合金は0.67と大きかったが, Co-Cr, Ti合金では0.2以下と小さかった. ORP値維持率では銀合金で約50〜25%に下がった. 金合金では約70%を維持していた. Ni-Cr合金では約50%に下がったが, Co-Cr合金では60〜90%を維持していた.
  • 吉成 純一
    1995 年14 巻6 号 p. 650-667
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
     陶材焼付用合金と陶材との溶着力を増すための新しい添加元素を探索する目的で, パラジウム-銀合金にチタン, ジルコニウム, シリコンを添加した15種の合金の諸性質を調べ, 以下の結論を得た.
     硬さ(HV)では, すべて150以上となり, シリコン3wt%添加が最大となった. 引張強さでは, シリコン添加率が増すと強さは減少した. 伸びでは, チタン4wt%添加が最大値となり, シリコン添加率が増すと減少した. 硫化ナトリウム水溶液による変色では, 浸漬前後の色差においてシリコン添加率が増すと大きくなった. 乳酸水溶液による重量変化では, チタン添加率が増すと重量が大きくなり, シリコン添加率が増すと小さくなった. 熱膨張係数は, 上昇時(37→650℃)でシリコン添加率が増すにつれて大きくなった. 下降時(650→37℃)では, チタン添加率が増すにつれて小さくなり, シリコン添加率が増すにつれて大きくなった. 熱膨張ヒステリシスでは, シリコン1wt%添加で最大値, シリコン2〜3wt%添加で最小値となった. 陶材焼付強さでは, ジルコニウム添加率が増すにつれて焼付強さは大きくなり, シリコン添加率が増すにつれて小さくなった. 以上から, チタンは約2wt%, ジルコニウムは2〜4wt%, シリコンは1wt%未満が良好であり, 今回の実験組成では合金48wt%Pd-48Ag-2Ti-2Zrが最良であった.
  • 第2報 鋳型通気性が鋳造欠陥に及ぼす影響
    渡辺 孝一, 大川 成剛, 金谷 貢, 中野 周二, 宮川 修, 小林 正義
    1995 年14 巻6 号 p. 668-676
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    一室加圧型チタン鋳造機について, 欠陥の発生と鋳型内湯流れをX線透過法と標識元素溶解法とを用いて観察した. また湯流れと欠陥との関係を明らかにするため, 形状の異なる3種のワックスパターンを同時に埋没して鋳込んだ.通気性の影響を調べるため, 通気度が非常に異なる3種の埋没材を用いた. その結果, 鋳型通気度が大きいと, 厚いパターンでは内部に, 薄いパターンやメッシュパターンでは外部に欠陥が発生しており, それぞれキャビティ内湯流れに関係していた. また, 通気度の小さい埋没材を使用した場合, ほとんど欠陥が認められなかった.
  • 藤森 伸也, 板橋 勇人, 宮崎 隆
    1995 年14 巻6 号 p. 677-680
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    陰極として用いたチタン板上へリン酸カルシウム系セラミックスの薄膜コーティングを行うために, 新たに電解液中放電を応用した. チタン板(陰極)と白金箔(陽極)を, リン酸三カルシウムを過飽和に溶解させた5 wt%クエン酸水溶液中に浸漬し, 直流パルス電源に接続した. 印加電圧の上昇とともに陰極近傍で液中放電を生じ, それに伴い陰極にセラミックがコーティングされた. コーティングされたチタン板の断面のSEM像によると, コーティングの厚さは5〜10μmで母材への密着性は良好であった. 800℃で熱処理したコーティング後のチタン板をX線回折で分析した結果, ハイドロキシアパタイト, 炭酸カルシウムおよび酸化チタン(TiO2)のピークが確認された. したがって, 電解液中放電を利用してチタン板上へハイドロキシアパタイト様セラミックスコーティングの化学的な生成が可能であることが認められた.
  • 土生 夏史, 高橋 英和, 燕 敏, 本村 一朗, 中村 英雄, 西村 文夫
    1995 年14 巻6 号 p. 681-690
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    歯科鋳造を迅速にする目的で, 市販の急速加熱型リン酸塩系埋没材の特性について検討した. この埋没材の特性と陶材焼付用金合金用の従来型リン酸塩系埋没材と比較したところ, 流動性が大きく, 硬化時の寸法変化が大きく, 加熱膨張がやや小さく, 生型強さがやや小さく, 表面粗さが小さかった. 練和開始30分後から800℃の炉に入れる急速加熱により30分以内で800℃に達した. 得られた鋳造体表面には鋳バリなどは認められなかった. したがって急速加熱型リン酸塩系埋没材を使用することで歯科鋳造の迅速化は可能と考えられた.
  • 関 文久, 戸井田 哲也, 中林 宣男
    1995 年14 巻6 号 p. 691-696
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    床用レジンの重合条件を再検討するため, 可能な限り酸素による影響を排除した条件で重合を行った. 減圧乾燥して吸着酸素と水分を除去したPMMA粉末と蒸留精製したMMAを用いてアルゴンガス雰囲気下でドウを作製後重合したレジンの, 高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定した残留モノマー量, ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による分子量分布および3点曲げ試験法によって測定した曲げ強さを従来法によるものと比較した. また曲げ試験後の破断面をSEM観察した.
     改良法のレジンでは従来法のものよりもモノマーの溶出は有意に少なく(p<0.01), 低分子量のポリマーの少ない重合物であった. また, 改良法のレジンは曲げ強さが従来法によるものよりも有意に高い値を示した(p<0.05). SEM観察から改良法によって得られたレジンのPMMAのパールとマトリックスレジンの界面に欠陥が少ないことが分かった.
  • 門磨 義則
    1995 年14 巻6 号 p. 697-702
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
     チオバルビツル酸モノマーである5-アリル-2-チオバルビツル酸(5AS)及び5-(4-ビニルベンジル)-2-チオバルビツル酸(5VS)を接着性モノマーとして, MMA-PMMA/TBBOレジンの液成分に添加した. MMA中のチオバルビツル酸の濃度は0.001から1 mol%の範囲で変化させた. 貴金属合金を含む7種類の歯科用金属を被着体として用いた. 鏡面研磨した2個の金属試料同士をこの試作接着性レジンで突き合わせ接着させた. 接着させた試料は水中で, 4と60℃の熱サイクルを2, 000回負荷してから, おのおのの金属当たり5個の試料の引張接着強さを測定することにより, 接着耐久性を評価した. これらの結果をチオバルビツル酸のエタノール溶液を表面処理剤として用いた場合と比較した.
     MMAモノマー中に0.01から0.05 mol%の5VSを添加した接着性レジンはパラジウム合金や銀合金に対して高い接着強さが得られた. この試作レジンの金合金に対する接着強さは, チオバルビツル酸で表面処理した場合には及ばなかった. チオバルビツル酸を表面処理剤に添加した場合とは異なって, この試作レジンは非貴金属合金に対しては効果がなかった.
  • 土井 豊, 幸田 起英, 足立 正徳, 堀口 敬司, 若松 宣一, 後藤 隆泰, 亀水 秀男, 西川 元典, 志水 雄一郎, 森脇 豊
    1995 年14 巻6 号 p. 703-709
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    チタン, 金合金, 金銀パラジウム合金, スライドガラス, 石英ガラス, ポリメチルメタクリレート, ポリスチレンなどをβ-グリセロリン酸カルシウム溶液(37℃でpH9.0に調整)に浸漬し, これら基板上にアパタイトを化学沈着させた. 各基板を, 二塩酸スベルイミノ酸ジメチルを架橋試薬として加えたアルカリファスファターゼと卵黄由来のフォスビチンを含む37℃の溶液に6日間浸漬した. 水洗後, アルカリフォスファターゼとフォスビチンを含む溶液に3時間浸漬し, その後各基板をβ-グリセロリン酸カルシウム溶液に20時間浸漬しアパタイトを化学沈着した. 実際には, 3時間と20時間の浸漬を7〜14回繰り返した. X線回折と赤外吸収スペクトルの解析より浸漬14回後の沈着層は, 骨アパタイトに類似したアパタイト性状を有することがわかった. また, 沈着層の厚さを電子線マイクロアナライザ及び走査電子顕微鏡で評価すると, その値はチタンを除く金属基板では若干小さくなる傾向を示したものの, おおむね20〜25μmであった.
  • 鈴木 禎
    1995 年14 巻6 号 p. 710-720
    発行日: 1995/11/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
     フッ素系ポリマーであるフッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体と, モノマーとしてエチルメタクリレート, 2-エチルヘキシルアクリレートおよび架橋剤としてペンタエリスリトールテトラアクリレートを用いた, 光重合型のアクリル系義歯床用軟質裏装材(2-6F)を試作した. 5種類の市販軟質裏装材ともあわせて, 硬さ, 水に対する接触角, 吸水率, 吸油率, 引張強さ, メタクリルレジンとの接着強さ, 粘弾性等の測定を行い, 比較検討した. いくつかの性質については水中浸漬前後の比較も行った. 2-6Fの特徴を以下に示す.
     耐久性の最も重要な因子である吸水率, 吸油率が5週間でそれぞれ0.36, -0.21wt%であり, 市販材料と比較してかなり低値であった. エチルメタクリレートモノマーの溶出率は, 13.5ppmできわめて低かった. 硬さは試験材料中ちょうど中間の46.7, 接触角は一般的な義歯床用レジンの値(70°)より大きく, 81.0°であった. 引張強さは16.58MPa, メタクリルレジンとの接着強さは3.40MPaであり, いずれの値も市販材料と比べかなり大きく, また水中浸漬でもその影響をほとんど受けなかった. 2-6Fは貯蔵弾性率, tanδの値が高く, 変形しにくく, エネルギーを吸収しやすいという粘弾性特性を有していた. 各材料はかなり異なる理工学的性質および粘弾性を有していることが明らかとなり, 術者が必要に応じて材料を選択することの重要性が示唆された.
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