歯科材料・器械
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原著
チタンおよびチタン合金の細胞接着に対するずり応力の影響
河出 任弘武田 昭二
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1996 年 15 巻 2 号 p. 161-168

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抄録

チタンおよびTi-6Al-4V合金の細胞接着性に対する硝酸および加熱処理の影響を調べるべく, 動的接触角を測定した.さらに, マウス結合組織由来のL-929細胞の相対細胞接着率の測定に加えて, 円錐円板型粘度計による定ずり応力負荷に伴う細胞の接着強さの測定を行った.その結果, 40%硝酸処理後では動的接触角に変化は認められなかったが, 加熱処理によって動的接触角は小さくなった.また, 定ずり応力を負荷しない条件下では, 800℃で1時間加熱処理群を除いて対照の培養用プラスチックシャーレに匹敵する良好な相対細胞接着率を示した.一方, 定ずり応力を負荷した場合, 定ずり応力の負荷時間が長くなるとともに細胞残留率は減少したが, 材料, 処理条件および培養時間のいずれにおいても差は認められず, 硝酸処理および加熱が細胞の接着性に対してほとんど影響を及ぼさないことが明らかとなった.以上の結果から, 細胞の接着強さはぬれ性からのみでなくより多面的な評価を行うことの必要性が明らかとなった.

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© 1996 一般社団法人 日本歯科理工学会
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