抄録
近年開発された多用途金合金焼付用低溶陶材3種の機械的性質と焼成体の組織について, 従来の金属焼付用陶材と比較検討した.多用途金合金用に調製された陶材は, 従来の低溶陶材の焼成温度よりもさらに低温で焼成する.機械的性質としてビッカース硬さ, 破壊靱性値, 曲げ強さを測定し, 焼成体組織のX線回折分析, SEM観察, そしてEPMA分析を行った.焼成スケジュールの影響を調べるため, 2種類の焼成炉で試験片を作製したところ, 多用途金合金焼付用低溶陶材では細かい焼成スケジュールを管理する必要性が認められた.3種類の多用途金合金焼付用低溶陶材の硬さは640〜690 (Hv), 破壊靱性値は1.02〜1.30 MPa・m1/2, 曲げ強さは52〜94 MPaであり, 一般の低溶陶材と同等以上のものからやや劣るものまで, 試料間に有意差が認められた.組織観察, X線回折, EPMA組成分析の結果, 粉末および焼成体の組成と組織が機械的性質に影響していることが判明した.