抄録
9種類のコンポジットレジンを用いて,5〜55℃水中環境下での曲げ試験ならびに破壊靭性試験,また破断面SEM像の観察を行い,試験時の温度変化がコンポジットレジンの機械的性質に及ぼす影響について検討した. 曲げ試験による,コンポジットレジンの比例限,曲げ強さ,弾性率は温度上昇に伴い顕著に低下したが,塑性変形量は逆に増加を生じた.破壊靭性値(KIC)は,温度変化による影響が曲げ特性の結果より小さく,25〜37℃で最大値を示し,55℃では低下する傾向のコンポジットレジンが多く認められた.破壊靭性値と弾性率から求めた臨界エネルギー開放率(GIC)は,温度上昇に伴う顕著な増加が認められ,コンポジットレジンの破壊挙動は試験時の環境温度に左右され,低温における脆性的挙動は高温における延性的挙動よりも,コンポジットレジンの破壊に対して大きな影響を及ぼすことが認められた.