抄録
本研究では, メチレン鎖長の異なる2種の脂肪族カルボン酸メタクリレート(MAC)をプライマーとして合成し, メチレン鎖長がMACと象牙質コラーゲンとの相互作用の強さおよびMAC処理した脱灰象牙質に対するコンポジットレジンの接着強さにおよぼす影響を検討した. MAC分子内カルボキシル基およびエステル基は象牙質コラーゲンと相互作用を起こし, その強さはカルボキシル基の方がエステル基より強いことがわかった.また, MAC処理した脱灰象牙質へのコンポジットレジンの接着強さはサーマルサイクルを施すことによって低下したが, その低下率は象牙質コラーゲンと強く相互作用を起こすO-メタクリロイルグリコール酸(メチレン鎖:1)は3-メタクリロイロキシプロピオン酸(メチレン酸:2)に比べて小さく, 接着耐水性の優れたプライマーであることが判明した.