歯科材料・器械
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19 巻, 1 号
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原著
  • 村松 安盛, 西山 典宏
    2000 年19 巻1 号 p. 1-10
    発行日: 2000/01/25
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー
    本研究では, メチレン鎖長の異なる2種の脂肪族カルボン酸メタクリレート(MAC)をプライマーとして合成し, メチレン鎖長がMACと象牙質コラーゲンとの相互作用の強さおよびMAC処理した脱灰象牙質に対するコンポジットレジンの接着強さにおよぼす影響を検討した. MAC分子内カルボキシル基およびエステル基は象牙質コラーゲンと相互作用を起こし, その強さはカルボキシル基の方がエステル基より強いことがわかった.また, MAC処理した脱灰象牙質へのコンポジットレジンの接着強さはサーマルサイクルを施すことによって低下したが, その低下率は象牙質コラーゲンと強く相互作用を起こすO-メタクリロイルグリコール酸(メチレン鎖:1)は3-メタクリロイロキシプロピオン酸(メチレン酸:2)に比べて小さく, 接着耐水性の優れたプライマーであることが判明した.
  • 今井 昇, 米山 千鶴子, 林 純子, 堀江 康夫, 齋藤 仁弘, 西山 實
    2000 年19 巻1 号 p. 11-15
    発行日: 2000/01/25
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー
    メタクリレートレジン義歯床用裏装材(PM用)6製品とスルホンレジン義歯床用裏装材(PS用)2製品の熱的性質について検討した。GCアクロン(GA, コントロール)は加熱重合して, ポリスルホンピンク(PP, コントロール)は円柱状に硬化させたレジンから切り出して, GCリベロンLCは光重合して, これら以外では製造者指示の粉液比にて常温重合してφ10×1mmに調整した。熱的性質はTC-2000L(真空理工)を用いて測定し, 熱伝導率を算出した.GAの熱伝導率は0.151, PM用では0.134から0.149であった.PPは0.160を示し, PS用では0.132から0.141を示した.t-検定の結果, PS用の1製品を除いて, 義歯床用裏装材とコントロールとの間に有意差(p<0.05)は認められなかった.
  • 矢崎 勇匡, 塩田 陽二, 廣瀬 英晴, 臼井 伸行, 大木 裕玄, 由井 眞司, 西山 實
    2000 年19 巻1 号 p. 16-26
    発行日: 2000/01/25
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー
    鋳造用リングライナーの緩衝能を表すひとつのパラメータとして埋没材の硬化膨張に対する湿ライナーの緩衝効果について検討した.ライナーとしては, セラミックファイバー系15種(A群:ロックウール系, B群:セラミックファイバー低温系, C群:セラミックファイバー標準系, D群:セラミックファイバー低温〜標準系, E群:カオリン系)を用い, アスベストリボン(AS)3種を対照とした.硬化膨張測定器の移動枠に湿ライナーを装着し, 埋没材の硬化膨張率を測定し, ライナー装着なしでの硬化膨張測定器の移動枠に湿ライナーを装着し, 埋没材の硬化膨張率を測定し, ライナー装着なしでの硬化膨張率との差, すなわち, 緩衝量からの緩衝効果を検討した.その結果, 湿ライナーの緩衝効果は, 以下の3つの群に分類された.(1)ライナー空隙への水の充塞率が高く緩衝効果がない群(A群およびD群の1種), (2)ライナー空隙への水の充塞率が高いにもかかわらず緩衝効果を発揮する群(E群およびAS群)および(3)ライナー空隙への水の充塞率が低く緩衝効果を発揮する群(B群, C群およびD群(1種を除く))
  • 岸井 次郎, 山内 六男, 長澤 亨
    原稿種別: 本文
    2000 年19 巻1 号 p. 27-33
    発行日: 2000/01/25
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー
    強酸性電解水により義歯清掃を行う場合, 床用レジンによって強酸性電解水の性質が変化した場合, その応用はできない.そこでわれわれは, 床用レジンを強酸性電解水に浸漬した場合, pH, 酸化還元電位および残留塩素濃度がどのように変化するかについても検討した.また, 臨床での使用条件を想定して唾液タンパクのこれら性質への影響についても検討した. 強酸性電解水中に床用レジンを浸漬しても, pH, 酸化還元電位, 残留塩素濃度には影響しなかった.しかし, γ-グロブリンの添加により, pHは有意に上昇し, 酸化還元電位および塩素濃度は有意に低下した. これらの結果から, 唾液などを十分に除去した後に強酸性電解水を作用させれば強酸性電解水によるデンチャープラークコントロールは可能であると考えられた.
  • 岸井 次郎, 山内 六男, 長澤 亨
    原稿種別: 本文
    2000 年19 巻1 号 p. 34-38
    発行日: 2000/01/25
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー
    強酸性電解水の殺菌を担う活性酸素が床用レジンにより影響を受けるかどうかについて電子スピン共鳴法を用いて検討した.また, 活性酸素が唾液タンパクにより影響を受けるかどうかについても検討した.活性酸素の測定には5.5-dimethyl-1-pyrroline-N-oxide(DMPO), 硫酸第一鉄を用いスピントラップ法により行った. 強酸性電解水からDMPO-OHに由来する特徴的なスペクトルパターンが観察された.DMPO-OHは床用レジンを浸漬しても影響を受けなかった.唾液タンパクを添加した強酸性電解水のDMPO-OHはコントロールと比較して減少を示し, 濃度依存性であった。 以上の結果から, 強酸性電解水をデンチャープラークコントロールに応用する場合, 義歯床に付着しているプラーク, 唾液などを機械的によく除去してから強酸性電解水を用いなければ効果が減弱することが示唆された.
  • 池田 訓子
    2000 年19 巻1 号 p. 39-48
    発行日: 2000/01/25
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー
    レーザーラマン分光法を用いてレジン添加型グラスアイオノマー (RMGI) セメント液の重合率の経時変化を求めるために, 外部標準法ならび内部標準法を用いて検討を行った. 測定したラマンスペクトル中のC=C伸縮振動の相対強度は種々の基準バンドを用いて算出した. その結果, 外部標準物質であるベンゼンや安息香酸の持つベンゼン環呼吸振動や, 内部標準としてのC=O伸縮振動は基準バンドとして不適当であることがわかった.CH2変角振動を用いた内部標準法では, 得られた重合率に補正を加えることにより正確な重合率を求めることができた.RMGIセメント液における重合率はVMが光照射直後に100%近い値を示したのに対して, LCでは4W後に100%の値が得られた.以上から, RMGIセメント液中のレジン成分の重合率を測定する上でこの方法が有用であることが認められた.
  • 福井 壽男, 國井 崇, 藤城 吉正, 守田 有道, 新家 光雄, 山田 史郎, 長谷川 二郎
    2000 年19 巻1 号 p. 49-55
    発行日: 2000/01/25
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー
    最近チタン-タンタル系合金が歯科用インプラントや整形外科の範疇で研究されている.この種合金は無刺激性で生体親和性に富みさらに優れた機械的性質と高い加工性を有している.この系の合金化は一般に行われているアーク溶解および高周波誘導加熱方法では難しいといわれている.それはチタンとタンタルでは密度が大きく異なりチタンの4.5g/cm3に対してタンタルは16.6g/cm3である.しかもチタンの融点は1, 680℃であるのに対しタンタルの融点は2, 990℃と高くいずれも酸素との反応性が高いためである. 今回我々は85wt%チタン-15wt%タンタルの二元系合金の溶製に高周波誘導加熱方法の一種である浮揚融解法(CCLM)の応用を試みた.浮揚融解法は水冷るつぼに高周波誘導により渦電流を発生させてるつぼに接触しないように合金を浮揚させながら溶解する方法である. この方法で1kgの85wt%チタン-15wt%タンタルの二次元合金の溶製に成功した.この結果CCLMによれば高融点で酸素活性が高く, 密度が大きく異なる金属でも合金化が可能であることが判明した。
  • 長井 恵
    2000 年19 巻1 号 p. 56-64
    発行日: 2000/01/25
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー
    ポリ乳酸(PLA)/コポリ(エチレンセバシン酸/ヘキサメチレンセバシン酸)ブロックポリマー2種類とそれにリン酸カルシウム(CP)を10%, 30%ブレンドした複合材料, および比較材料としてPLAを取り上げ, その分解性を検討した。試料フィルムを37℃のリン酸塩緩衝液(pH7.4)に最長1年間浸漬し, 吸収率, 引張強さ, 分子量, 熱的性質の変化を測定した.その結果, これらの性質の変化は, ポリマーの種類, CPの添加量により異なっていた.ブロックポリマー中のコポリセバシン酸エステルの比率を多くすることにより, 分解は促進される傾向, またCPを添加することによりポリマーの分解は抑制される傾向が認められた.DSC分析の結果から, ブロックポリマーの分解には材料の結晶化が関与してくることが推定された.本研究科の結果, ポリ乳酸とコポリセバシン酸エステルの比率を変えたり, またそれにリン酸カルシウムを添加することにより, 多様な分解挙動を示す材料を作り出せる可能性が示唆された.
  • 中野 由美子
    2000 年19 巻1 号 p. 65-76
    発行日: 2000/01/25
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー
    リン酸八カルシウム(OCP)の歯科臨床応用をめざし, リン酸二水素カルシウム一水和物と炭酸カルシウム混合粉末をリン酸水素ナトリウム緩衝液(pH=7.4)で錬和することにより, OCP硬化体を作製した.この粉末成分にα型リン酸三カルシウム(α-TCP)を添加した結果, α-TCP含有率69.0mass%で機械的性質が最も優れ, 錬和開始7日後の圧縮強さは12.0MPaとなり, α-TCP 0mass%の約7倍となった.SEM観察により, この機械的性質の改善は空孔の減少と微細構造の均一化などに起因することがわかった.α-TCPを69.0mass%添加したOCP硬化体は擬似体液中で錬和開始1日後にリン酸水素カルシウム二水和物を初期生成し, 6週間後にOCP, HApへ転化した.以上より, α-TCPを添加したOCP硬化体は歯内療法において硬組織修復材として十分な機械的特性を有し, 生体材料としての応用の可能性があることが示唆された.
  • 高橋 英和, 中村 英雄, 土生 夏史, 大谷 徹, 岩崎 直彦, 矢作 光昭, 西村 文夫
    2000 年19 巻1 号 p. 77-83
    発行日: 2000/01/25
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー
    練和開始20分後に加熱開始可能な新しい急速加熱型石膏埋没材の特性を評価した.この埋没材の組成は石膏と石英とクリストバライトと考えられた. 効果反応は練和開始30分後に加熱開始可能な急速加熱型石膏埋没材よりも速やかであった.しかし電気炉で加熱開始可能な練和開始20分以降も硬化膨張は継続して増大した.この新しい埋没材を使用して作製した鋳造体には明瞭な鋳造欠陥は認められなかった.この埋没材を用いて作製した鋳造体の寸法精度は加熱開始時期が練和開始60分後までは変化しなかった.しかし, この鋳造体の寸法は従来型の石膏系埋没材で作製した鋳造体よりわずかに大きかった.新しい埋没材を使用して作製した鋳造体の表面粗さは従来型で作成した鋳造体と有意な差は認められなかった.
  • 柴田 陽
    2000 年19 巻1 号 p. 84-91
    発行日: 2000/01/25
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー
    チタン表面にグロー放電処理を行い, 表面ぬれ性を向上させることが本研究の目的である.当教室では以前に小型のグロー放電処理装置を開発し, チタン表面にグロー放電処理を行い, そのぬれ性の向上および細胞初期付着について検討したが, 処理条件の検討については行われなかった.今回の研究では, 新たに処理条件の調整可能な試作グロー放電処理装置を開発し, ぬれ性向上に対する最適な処理条件を模索した。また決定されたグロー放電処理により, チタン表面への血液タンパクの親和性および, 本装置の滅菌効果について検討した.その結果, グロー放電処理によるぬれ性の向上は, 放電中の電流値に依存することが判明した.このぬれ性の向上により, グロー放電処理を施したチタン板表面は未処理の表面上に比べ, 高いレベルの血液タンパクの付着を示した.また, 本処理はチタン表面に対し, 完全な滅菌効果を示した. 以上より, グロー放電処理はチタン表面を洗浄化し, その生体親和性を向上させることが判明した.
  • 小菅 佳久
    2000 年19 巻1 号 p. 92-101
    発行日: 2000/01/25
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー
    従来のPMMA/MMA-TBB系レジンセメントの性質を改良するため, 粉末性状の異なる種々のPMMA粉末を用い, PMMA/MMA-TBBレジンの硬化時間, 操作時間, 被膜厚さ等のセメント特性に及ぼす影響を検討した.セメント特性は粉末の分子量, 分子量分布, 粒径, 形状によって大きく影響を受けたが, 特に分子量分布は重要な因子であることが示唆された.PMMA粉末を粉砕することによりセメント特性をある範囲内で変えることはできたが, 限界があった.しかし, 粉砕粉末に球状のPMMA粉末を混合することにより, 操作時間は延長し, 被膜厚さは薄く, またその時間的変化も小さくなった。このようなタイプの粉末混合物を用いることにより, 象牙質の接着強さは維持しつつ, 操作性が向上し, 浮き上がりが少なく, バリが除去しやすい, 臨床上有用なレジンセメントになることが示唆された.
  • 星野 高之, 倉持 健一, 森山 明勲, 渡部 康男, 日比野 靖, 堀田 正人, 関根 一郎, 中蔦 裕
    2000 年19 巻1 号 p. 102-107
    発行日: 2000/01/25
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー
    本実験では, コーティング材塗布による充填用グラスアイオノマーセメントの機械的性質の影響について検討を行った.実験には従来型グラスアイオノマーセメント(Fuji IONOMER TYPE II, GLASIONOMER-F), 光硬化型グラスアイオノマーセメント(Fuji IONOMER TYPE II LC, Vitremer)ならびにグラスアイオノマーモディファイドコンポジットレジン(コンポマー)(Xeno, Dyract)をそれぞれ2種類ずつ用いた.コーティング材は市販の光重合型表面滑沢材ベルフィールブライトナーIIを用いた.実験はコーティング材を塗布した試料と無塗布の試料を作製して, 水中浸漬24時間後と1週間後とにブリネル硬さと曲げ強さを測定した.コーティング材を従来型グラスアイオノマーセメントに塗布することによりブリネル硬さは大きくなった.また, コンポマーDyractを除くすべての材料においてコーティング材を塗布することによりコーティング材を塗布しない場合に比べ曲げ強さは大きくなった.他の材料に比べ, とくに従来型グラスアイオノマーセメントへのコーティング材の塗布は機械的性質を大きく向上させた.
  • 大川 成剛, 渡辺 孝一, 金谷 貢, 中野 周二, 宮川 修
    2000 年19 巻1 号 p. 108-114
    発行日: 2000/01/25
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー
    一室加圧型のチタン鋳造機を用いて, 鋳造時の鋳造室と鋳造空洞の圧力挙動を検討した.鋳型と鋳型空洞との関係を模した装置を鋳造室の扉に取り付け, 鋳造室内の圧力挙動と鋳型を通して, 鋳型空洞に侵入するガスの圧力挙動を圧力センサーにより測定した.その結果, 鋳造室内の圧力上昇は, 圧力の立ち上がりから約0.2sで設定鋳造圧の約半分まで急速に上昇した. 鋳型空洞の圧力上昇および鋳造室と鋳型空洞との圧力差は, 設定鋳造圧はもちろん, 埋没材の通気度に大きく左右された.また, 圧力上昇が速い鋳型の場合, チタン溶湯が鋳型空洞を満たす前に, 多量のアルゴンガスが鋳型空洞に侵入する.このため, 鋳込み不良や, ガスの巻き込みによる内部欠陥が生じやすい.したがって, 一室加圧型鋳造では, 通気度の小さい埋没材を使用することが望ましい.
  • 大谷 徹
    原稿種別: 本文
    2000 年19 巻1 号 p. 115-123
    発行日: 2000/01/25
    公開日: 2018/11/01
    ジャーナル フリー
    歯科鋳造の迅速化の一環として, 鋳造の加熱時間を短縮する目的で, コイル状の軟鉄製ワイヤーを発熱体として高周波誘導加熱法を鋳型の加熱に応用することを試みた.急速加熱型石膏系埋没材の鋳型を1.1kWの高周波出力で8分間, 出力1.8kWで9分間, 高周波誘導加熱を行うことで鋳型中心部の温度は700℃に達した.出力1.1kWで8分間, 出力1.8kWで8分間加熱した鋳型では鋳造体に鋳バリはないものの埋没材の焼き付けが認められた.出力1.1kWで8分間, 出力1.8kWで6分間の14分間加熱の条件では鋳バリ, 焼き付けのない鋳造体が得られた。これら高周波誘導加熱法で得られた鋳造体の寸法は, ワックスパターンと比較するとリング直径方向は小さく, リング長軸方向は大きかったが, 鋳型内部に配置した軟鉄製ワイヤーが原因と考えられた.以上より, 寸法精度については改善する必要があるが, 高周波誘導加熱法を用いることで, 鋳型加熱時間が14分間で鋳造可能なことが明らかとなった.
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