抄録
形状記憶効果を示すFe〜30at%Pd合金の生体材料としての適合性を1%食塩水中でのアノード分極挙動および鶏の脛骨への移植による生体反応により調べた.食塩水中での自然電位は約-80mV(甘汞電極基準)で-240mVのNi-Tiよりはかなり貴であったがアノード分極においては不動態破壊電位が約450mVとNi-Tiの1, 200mVよりかなり低く不動態被膜の耐食性の差がみられた.動物実験において移植後3ヵ月では, 純Niで報告されているような腫瘍状膨隆は認められなかったが, Fe-30.5Pdと骨の界面に結合織膜の形成を生じている部分があり, そこではFeの溶出が認められた.また合金に接する骨部においても場所により主にFeの溶出が認められた.