歯科材料・器械
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3 巻, 6 号
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原著
  • 平林 茂, 平澤 忠, 中西 敏
    1984 年3 巻6 号 p. 719-729
    発行日: 1984/11/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    可視光線重合型コンポジットレジンは, 従来の化学重合型コンポジットレジンとは異なり, 材料の表面下のある深さまでしか硬化せず, また, この硬化深さは種々の因子により変化する。そこで, 本報では, この硬化深さに影響する諸因子について検討した。同一材料でも, レジンの色調により硬化深さは異なり, 色調により照射時間を調節する必要を認めた。照射時間を長くすることにより, 硬化深さは深くなった.また, 光照射器の照射の仕方にも影響を受け, 照射距離が短いほど, 硬化深さは深くなり, 照射器の照射ロッドの中央部で照射するのが最適と認められた.さらに, 窩洞の材質にも影響され, 光透過性のある象牙窩洞で重合したときの硬化深さは, 光透過性の全くないステンレス製窩洞で重合したときの約1.2倍となった.
  • 平林 茂, 平澤 忠, 中西 敏
    1984 年3 巻6 号 p. 730-738
    発行日: 1984/11/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    可視光線重合型コンポジットレジンの硬化深さは, 使用する光照射器の光強度に依存すると考られる.そこで, 本報では, 7種の可視光線重合型コンポジットレジンと7器種の光照射器のすべての組み合わせにおける材料の硬化深さを測定し, 照射器の互換性を検討した.さらに各照射器から照射される光の分光スペクトルを測定し, 照射器の光強度と材料の硬化深さの関係についても検討した.可視光線重合型レジンの硬化深さは, 同一材料に対しても, 使用する光照射器の違いにより変化した.しかし1器種を除いた他の6器種の光照射器は, ほとんどの材料に対して, ほぼ同程度の硬化深さを示し, それら6器種の光照射器は7種の材料に対して互換性が有ると認められた.各照射器の分光スペクトルは, それぞれ異なるパターンを示した.光増感剤(カンファキノン)の吸収波長領域410〜500nmにおける照射器の相対光強度と材料の硬化深さとの間に相関性があると推察された.同一光照射器を使用しても, 硬化深さは, 材料および色調により変化した.
  • 窪田 敏之
    1984 年3 巻6 号 p. 739-746
    発行日: 1984/11/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    歯科用接着性レジンのセラミックスに対する接着強さを検討した.接着剤はMMA, 4-META, PMMA, TBB-Oの組成の試作品とこれにシランカップリング剤を応用したもの, およびパナビアEXを用いた.被着体はVITA社焼付用陶材VMK68のdentin色とOpaque色, Kyocera社の人工歯根材料BIOCERAMを使用した.シランを含まない試作レジンとPanavia-EXはどちらもこれらの被着体に対し接着性を示したが, シランを応用した試作レジンはさらに優れた接着性を示した.しかしどの接着剤も長期間の水中浸漬により接着強さの低下を示し, 臨床的応用には不充分と思われた.BIOCERAMはシランを含む試作レジンと優れた接着性(1ヵ月水中浸漬で213kgf/cm2)を示した.一方, 引張接着試験時の, 陶材の破壊され易さを調査したところ, Panavia-EXでは接着強さが大きい場合, 被着体破壊を起こし易かったが, 試作接着性レジンでは陶材の破壊を起こした例はなかった.
  • 村上 弘
    1984 年3 巻6 号 p. 747-759
    発行日: 1984/11/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    Bis-GMA系コンポジットレジンの流動特性を考察する基礎的データを蓄積するためにコーンプレート型レオメーターを使用し, Bis-GAM+TEDMAモノマー混合物(10:0, 8:2, 7:3, 6:4, 4:6, 2:8, 0:10)およびモノマー混合物にフィラーを混合した複合物の粘性挙動を測定した.測定は粘度-時間曲線および流動曲線を求めた.その結果, モノマー混合物の粘度はTEDMA量の増加に伴い著しく減少した.また, モノマー混合物はニュートン流体であり, 20〜37℃の範囲内でアンドレード型の温度依存性を示し, 見かけ上の流動の活性化エネルギーの対数値とTEDMA量は直線関係を示した.複合物はチクソトロピーを示し, フィラー量の増加に伴い, そのチクソトロピーは大きくなった.また, チクソトロピーは20〜37℃の範囲内で温度上昇に伴って減少し, アンドレード型の温度依存性を示した.
  • 竹内 正敏, 森脇 豊, 都賀谷 紀宏, 堤 定美, 井田 一夫
    1984 年3 巻6 号 p. 760-766
    発行日: 1984/11/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    埋没材の通気性が鋳込みに与える影響を調べるため, 埋没材の通気性以外の鋳造条件を固定させ, 4種の通気率の異なる埋没材を使用し, 鋳造方法別に鋳込み率を測定して通気率と鋳込み率の相関を調べた.鋳造方法は(1)遠心鋳造(2)空気圧鋳造(一端加圧型)(3)空気圧鋳造(両端加圧型)(4)吸引鋳造を用いた.鋳込み率の測定は全長200mmのコイル状パターンを使用し, この復元比を鋳込み率とした.高温時通気率の測定は第2報と同様の測定方法によって行った.その結果, 通気率の向上は一般的に鋳込み率を増加させるが, 関与の大きさは鋳造方法により異なっていること, また両端加圧型空気圧鋳造では, 逆に通気率の上昇は鋳込み率の低下をもたらすことが判った.
  • 小園 凱夫, 田島 清司, 柿川 宏, 林 一郎
    1984 年3 巻6 号 p. 767-774
    発行日: 1984/11/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    前報において, リン酸塩系埋没材の膨張, とくに硬化膨張は, 練和条件および製品ロットの違いによって著しく変化することを報告した.今回は, これらの膨張の変動に伴うNi-Cr合金鋳造体の寸法精度ならびに適合性の変化について検討した.リングには、セラミックライナーを1枚裏装した.とくに硬化膨張を抑えた埋没材製品を使用した場合を除いて, 六角柱状鋳造体はワックスパターンより大きくなった.このようにNi-Cr合金の鋳造収縮は補償され得るが, クラウンはほとんどの場合, 支台模型上で浮上りを生じた.埋没材の硬化膨張が大きくなると, 鋳造体寸法は大きくなり, クラウンの浮上りは小さくなっていき, 硬化膨張が最も大きくなる条件であったL/P比を小さくした場合には, 浮上りは全く認められなかった.埋没材製品ロット間で著しい硬化膨張の差異がみられたが, その影響をうけて, クラウンの浮上りにも著しい差が認められた.
  • 小田 豊, 小林 博, 住井 俊夫
    1984 年3 巻6 号 p. 775-779
    発行日: 1984/11/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    メタル・セラミックス用陶材の軟化温度を明らかにする目的で, 熱膨張曲線, 荷重軟化温度, 塑性変形速度を求め比較検討した結果以下の結論を得た. 1. 焼成陶材の熱膨張曲線における収縮開始および熱膨張係数の減少する温度は陶材の軟化温度とは異なり, 焼結の進行に伴なって生ずるものである. 2. 1, 000kgf/cm2〜20kgf/cm2の応力下における荷重軟化温度は600℃以上にあり, 600℃以下では陶材の塑性変形による応力緩和は生じない. 3. 各陶材の塑性変形速度から粘度を算出し, 典型的ガラスと比較して軟化温度を求めるとJelenko陶材861℃, Ceramco陶材900℃, Vita陶材846℃付近となり, 歪点はJelenko陶材527℃, Ceramco陶材497℃, Vita陶材526℃付近となった.
  • 原 正明
    1984 年3 巻6 号 p. 780-786
    発行日: 1984/11/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    前報では, 新しい歯科鋳造用磁性合金の組成として, Au-Co-Ni3元合金について検討し, その磁気特性, 融点, 機械的性質及び耐食性について報告した.その結果, Au-Co-Ni 3元合金は, 耐食性及び鋳造時の湯流れに問題を残したが, その他の性質は良好であった.本報では, これらの問題を解決する目的で, パラジウム, クロム及びシリコンの添加を行ない, 前報と同様の項目について検討し, さらに, 実際のSm-Co磁石に対する吸引力を計測した.結論は以下の通りであった. 1. 15%パラジウムまたは2%クロムの添加により, 耐食性が改善された. 2. 0.2%シリコンの添加で, 湯流れが良くなり, 湯の溶け落ちが分かりやすくなった. 3. 実験試料の中では, 34.8Au-15Pd-30Co-20Ni-0.2Si, 47.8Au-2Cr-30Co-20Ni-0.2Si, 66.8Au-10Pd-14Co-9Ni-0.2Si, 74.8Au-2Cr-14Co-9Ni-0.2Siの各組成が, 歯科鋳造用軟質磁性合金として, 有望な性質を示した.
  • 山本 喜子
    1984 年3 巻6 号 p. 787-796
    発行日: 1984/11/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    合成ハイドロキシアパタイト-ポリアクリル酸複合材によるセメント(グラスアイオノマーセメント媒体による)を試作した.試作セメントの圧縮強度はハイドロキシアパタイトの焼成温度を高くしていくにしたがってよくなり, 1, 400℃焼成のハイドロキシアパタイトを用いることにより, 1, 300kg/cm2まで達した.この強度の増加はP/W比の増加, 1, 300℃以上でのHAPからTCPへの分解反応等が寄与していることがわかった.また, 1, 300℃以上で焼成したHAPと, PAAとの反応では, COO-Caの結合が生ずることがわかった.一方, このセメントを比較的若年者の10歯を用いて, 病理組織学的に検討したところ, 充填後1ヵ月間では, 病的歯髄反応は認められなかった.
  • 下里 隆史, 山中 彬, 倉田 茂昭, 山崎 升
    1984 年3 巻6 号 p. 797-801
    発行日: 1984/11/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    義歯床用レジンに対し炭素繊維(CF)クロスで補強を施した場合, クロスの厚みおよび枚数の変動に対する曲げ, 引張りおよび衝撃強さへの影響, またはADA規格によるたわみ量よりみた口腔内装着時の実用性について検討を試みた. (1) CFクロス単層型においては, エポキシ樹脂処理(ECF)または塩化ラウロイル(LOCF)処理のクロスについては, それぞれ0.1, 0.2および0.4mm厚みのもの, (2) CFクロス積層型においては, 0.1mm厚のECFを2または4枚重ねの試験片を作製した.その結果, ECFクロスでは厚みおよび枚数の増加とともに複合レジンの上記諸物性は増大するのに対し, LOCFクロスの場合, 変化が認められなかった.またECF積層で補強された複合レジンの実用的許容度は, たわみ量から判定すると, 単層型で0.2mm厚, 積層型で0.1mm厚×2枚複合が限度であることが明らかになった.
  • 伴 清治, 北岡 正, 久田 和明, 高橋 好文, 長谷川 二郎
    1984 年3 巻6 号 p. 802-809
    発行日: 1984/11/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    7種の鋳造冠用Ni-Cr系合金の微細組織を観察し, 37℃のRinger液中での電気化学的腐食挙動に与える影響について検討し, 次のような結論を得た.Ni-Cr系合金の自然電極電位はCr濃度だけでなく, Mo, Cu, W, C, Bの濃度も影響し, Mo, Cuは貴な側に, W, C, Bは異相を析出させるために卑な側にする.また, Moは耐孔食性の向上にも効果がある.さらに, 構成元素の偏析と異相が析出していると, Cr濃度の低い相が存在するために孔食を受けやすい.
  • 松村 英雄, 小島 克則, 門磨 義則, 増原 英一
    1984 年3 巻6 号 p. 810-820
    発行日: 1984/11/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    フタル酸, イソフタル酸, テレフタル酸のモノメタクリロイルオキシエチルエステルを合成し, これらのモノマーをMMA-TBBO系レジンに添加した接着剤を調製した.上記の接着剤を用いてバフ研磨した14種類の純金属と6種類の歯科用合金に対する接着強さを、熱サイクル2, 000回まで行なったのち測定し, それらの接着性を評価した.3種類のモノマーの添加効果を比較すると, テレフタル酸水素メタクリロイルオキシエチル(MEtPh)が添加量が微量であったにもかかわらず最も接着強さが大きかった.フタル酸水素メタクリロイルオキシエチル(MEPh)とイソフタル酸水素メタクリロイルオキシエチル(MEiPh)では無添加のときよりも接着強さは上昇したが, 熱サイクル試験による接着強さの低下が大きかった.各種金属に対する接着強さの測定では, Zn, Al, Snなどが比較的良好な値を示した.
  • 木村 博, 荘村 泰治
    1984 年3 巻6 号 p. 821-825
    発行日: 1984/11/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    形状記憶効果を示すFe〜30at%Pd合金の生体材料としての適合性を1%食塩水中でのアノード分極挙動および鶏の脛骨への移植による生体反応により調べた.食塩水中での自然電位は約-80mV(甘汞電極基準)で-240mVのNi-Tiよりはかなり貴であったがアノード分極においては不動態破壊電位が約450mVとNi-Tiの1, 200mVよりかなり低く不動態被膜の耐食性の差がみられた.動物実験において移植後3ヵ月では, 純Niで報告されているような腫瘍状膨隆は認められなかったが, Fe-30.5Pdと骨の界面に結合織膜の形成を生じている部分があり, そこではFeの溶出が認められた.また合金に接する骨部においても場所により主にFeの溶出が認められた.
  • 河合 達志, 久田 和明, 北岡 正, 河村 訓陸, 長谷川 二郎, 加藤 誠
    1984 年3 巻6 号 p. 826-832
    発行日: 1984/11/25
    公開日: 2018/03/12
    ジャーナル フリー
    歯科用合金の鋳造収縮を検討するために, 金合金5種と, 金パラジウム銀合金の密度を室温から約1, 400℃までの温度範囲で測定した.用いた装置は前報で報告した静滴法に基づく密度測定装置である.合金の密度の温度依存性から求めた室温密度, 固相点密度, 液相点密度から凝固収縮を計算した結果, 凝固収縮は多成分合金程小さいことがわかった.多成分合金は表面に樹枝状結晶が認められ, 凝固中におけるこの結晶成長が, 合金内部に空隙を引き起こし, その結果小さな凝固収縮を現わしたと考えられる.
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