歯科材料・器械
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原著
接着性レジンの歯髄への影響
伊東 邦彦水沼 徹中林 宣男
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1986 年 5 巻 2 号 p. 287-294

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抄録
分子内に疎水基と親水基とを有するメタクリレートであるHNPM, Phneyl・P, 4-METAは, 歯質と親和性をもつために歯質にとり込まれた形で拡散重合し, 分子レベルで歯質とまざりあって硬化一体化し, その結果高い接着強さが得られる.この歯質接質性モノマーの歯髄に対する影響を調べるために, これらモノマーを数%ずつ添加溶解したMMA-TBB系即硬性レジンを成犬歯牙の頬側面に形成された窩洞に充填し, 術後1, 4, 8週の歯髄の病理学的反応をクリアフィルFと比較して検討した.結果は次の通りである.1)接着性モノマーを含んだMMA-TBBレジンの方がクリアフィルFに比べて象牙芽細胞層の変化・循環障害の程度・炎症性細胞浸潤の程度が術後1, 4週では強かった.これはbaseレジンであるMMAの影響によるものと考えられた.しかしながら術後8週では, 歯髄の反応程度はクリアフィルFとほぼ同等であった.2)接着性モノマーを添加溶解したMMA-TBBレジンを比較した場合, HNPMを溶解したMMA-TBBレジンが, Phneyl・Pや4-METAを溶解したMMA-TBBレジンに比較すると強い歯髄反応を初期に示した.これは歯質に対する接着性モノマーの機能の差によるものと考えられた.また術後8週では, HNPMの症例に窩壁に細菌を認める所見があらわれた.
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© 1986 一般社団法人 日本歯科理工学会
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