歯科材料・器械
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5 巻, 2 号
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原著
  • 宮崎 隆, 鈴木 暎, 宮治 俊幸
    1986 年5 巻2 号 p. 187-195
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    白歯用コンポジットレジンの機械的性質に対して, サーマルサイクルと水中浸漬が及ぼす影響について検討した.6種の市販のコンポジットレジンを用いて, 試料を作製後1日37℃蒸留水中に保管してから, 37℃, 60℃, 37℃, 4℃のサーマルサイクルを, 圧縮試片については, 2, 000回, 10, 000回, 20, 000回, 曲げ試片とダイアメトラル試片については10, 000回与えて, 各試験を行なった.その結果, CP, P10, BF, MJでは圧縮耐力に, CP, P10, IM, PFでは曲び強さに, サーマルサイクルによる劣化が原因と思われる強度の低下が認められた.
  • 佐藤 尚毅, 勇木 映, 佐藤 淳子, 甲斐 真貴子, 新谷 英章, 井上 時雄
    1986 年5 巻2 号 p. 196-202
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    本研究ではコンポジットレジンの着色に及ぼす研磨の影響を調べ, 圧接面や研磨処理面への染色液の着色と浸透度とを観察した.4種のレジンを用い(1)圧接面(2)white point研磨面(3)仕上げ研磨面の3種類のレジン表面を作製し, それぞれ60日間の0.2%フクシン溶液による着色をAdamsのL, a, bによる色差値ΔEで求め, また, これらの薄切切片観察による着色層を測定した.その結果, 仕上げ研磨面の着色が最も少なく, 圧接面, white point研磨面の着色が大であった.圧接面は60日後, 超音波洗浄を施してもほとんど着色の減少は起こらなかった.着色層の厚さも同様で仕上げ研磨面が最も薄い結果となった.全ての処理面において色差値が高い材料程, その着色液の浸透度が大きく, 両者に相関が認められた.一方, 疎水基を有するMicrorestの着色は少なく, 着色層も全材料中最小であった.
  • 岡崎 正之, 高橋 純造, 木村 博
    1986 年5 巻2 号 p. 203-208
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    カルシウム-リン供給比(Ca/P)fを広範囲に変化させることによってフッ素化アパタイトを合成した(80℃, pH7.4).カルシウム-フッ素供給比をフルオロアパタイトの理論値(Ca/F)f=5と一定にしているにもかかわらず, フッ素の取り込みは(Ca/P)f<1.67できわめて抑制され, (Ca/P)f=1.67の試料ではフルオロアパタイトの理論値に近い値を示したのに対し, (Ca/P)f=0.1の試料ではその約半分しかなかった.一方, a軸の格子定数, 結晶性および溶解性は, (Ca/P)f=1.67一定にし異なるF供給量のもとで合成したフッ素化アパタイトが示す曲線に沿ってほぼ変化した.これらの結果は, フッ素化アパタイトの物理化学的特性が他のイオンより, いかに強くF含有量によって支配されているかを示唆している.
  • 松村 英雄
    1986 年5 巻2 号 p. 209-216
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    MMA-TBB系レジンによる歯科用合金の接着に関する研究の一環として, 金属の接着試験法と合金の表面処理法について検討した.純金属を用いた接着耐久性試験の結果, AlとSnが良好な接着性を示した.また熱サイクル試験は長期水中浸漬試験に比して過酷な試験であり, 接着耐久性の判定に有効な方法であると考えられた.合金の表面処理はType IV金合金および金銀パラジウム合金に対してはSn電析法, ニッケルクロム合金に対しては塩化第二鉄アセトン溶液処理法が有効であった.
  • 俵木 勉
    1986 年5 巻2 号 p. 217-221
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    実験に用いるエポキシ樹脂製の原型の表面あらさと, 軸壁傾斜角度を測定し, 検討を加えた.そして, セメントを介在させないブリッジの浮き上がりについても測定を行なった.その結果, 以下のような結論を得た.1)エポキシ樹脂を用いて作製したブリッジの原型が今後の実験に使用できることを, 確認した.2)ワックスアップ時に, ブリッジの辺縁部分を再度軟化圧接することは, 必ず行なわなければならない術式であることを, 再確認した.3)セメントを介在させない場合, 浮き上がり量は, テーパーとは強い負の相関をもって減少することが認められた.
  • 俵木 勉
    1986 年5 巻2 号 p. 222-231
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    ブリッジのセメント合着時に生ずる浮き上がりに関して, 軸壁傾斜角度とセメント練和時の練板温度の影響について, 検討を行なった.実験には, 小臼歯, 大臼歯, ともに4°から14°まで軸壁傾斜角度を変化させることができる, 当講座で作製した金型を用いた.その結果, 以下のような結論を得た.1)前報で報告した通り, セメントを介在させない場合, 浮き上がり量は軸壁傾斜角度と強い負の相関をもって減少する.しかし, 今回, セメントを介在させると, 8°と10°との間で減少を示すが, そのほかの場合では大きな変化は認められなかった.2)ブリッジ全体の浮き上がり量は, 小臼歯より大臼歯の軸壁傾斜角度に影響されることが認められた.3)小臼歯の軸壁傾斜角度が大きく, 大臼歯の軸壁傾斜角度が小さい場合に, ブリッジの傾きが顕著に認められ, 逆の場合では, そのような現象は認められなかった.4)ADAS No.8に基づいた, 稠度, 被膜厚さ試験では, 練板温度を下げることにより, 著しい稠度の低下, 被膜厚さの減少は認められなかった.しかし, 練和を含めた操作時間を2分と短くすることによって, はっきりと, 稠度, 被膜厚さが減少するのを観察することができた.5)ブリッジにおける浮き上がり量においても, 練板温度を下げることにより, 明らかに, その被膜厚さの減少が認められた.それは, 室温20℃前後, 相対湿度60%ぐらいの通常の診療室の環境では, 室温より5℃〜7℃低い温度が適当と思われる.
  • 加藤 裕正, 和久本 貞雄, 鈴木 正子
    1986 年5 巻2 号 p. 232-237
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    10%クエン酸-3%塩化第二鉄水溶液で処理された象牙質に, 4-META含有MMA-TBB系レジンを応用すると, 接着界面層に耐酸性の増加した樹脂含浸象牙質が形成されて, 18MPaという大きな接着強さが得られることが中林らによって報告されている.従来より, SEMなどで形態学的に樹脂含浸象牙質が認められているが, 筆者らはさらに, ラマンマイクロプローブにより界面層の分析を試みたところ, 界面より象牙質側に約5μmの厚さで, 樹脂成分と象牙質成分が混在する層が確認され, 分子分光学的にその存在を立証することができた.しかも, 樹脂含浸象牙質では, 4-METAの多くは4-METに変化し, かつそれらが濃縮していることが推測された.
  • 藤沢 盛一郎, 門磨 義則
    1986 年5 巻2 号 p. 238-245
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    可視光線重合型レジンシステムが我が国でも広く使用されるようになってきた.このシステムに於いて, ジメタクリレートモノマーは, 可視光線照射による増感剤(CQ, カンファキノン)と還元剤(DM, ジメチルアミノエチルメタクリレート)の化学反応により重合開始される.これら光感受性物質により誘起される生物学的反応をモニターするため, (CQ, ベンジル(BZ), 9-フルオレノン(9F), ベンゾインメチルエーテル, アゾビスイソブチロニトリル, アクリジンオレンジ(AO), アントラセン(AN)中性赤(NR)などの光感受性物質により誘起される, ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)リポソームの相転移特性(相転移温度T, エンタルピーΔH, エントロピーΔS, DSCピークの高さ/半値幅, H/HHW)の動的挙動変化を示差走査熱量計(DSC)を用いて熱量的に研究した.可視光線重合開始剤において, 9F+DM, BZ+DMは大きな相転移変化(Tの低温シフト, ΔHの減少)を示したが, CQ+DMの変化は小さかった.芳香族ケトン類(9F, BZ)は脂肪族ケトン(CQ)よりリポソーム相互作用が大きかった.AO, NRはΔHの変化が小さかったが, Tを高温シフト(1〜3℃)させた.またAO, AN, NRは30℃, pH10, 酸素存在下, 光増感されると, ΔHとΔSに大きな変化を示した.二重結合をもたないDMPCは, ラジカルによる脂質過酸化は起こらない.それ故, 光感受性物質によるリポソームの強い相互作用は光増感により励起された増感剤(CQ, BZ, 9F)+還元剤(DM), および光感受性物質(AN, AO, NRなど)+酸素の電荷移動錯体によりひき起されることが明らかになった.
  • 片倉 直至, 荒木 吉馬, 川上 道夫
    1986 年5 巻2 号 p. 246-251
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    インレーワックスは収縮や応力緩和の大きい材料であるが, これらの性質は必ずしも欠点であるとは限らず, たとえば内側性部分のセメント層を確保するためには, ワックスが収縮しなければならない.またワックスの応力緩和は, パタンの外側性部分の収縮抑制に大きく寄与している.このような観点から, 内側性部分と外側性部分を合わせ持った複雑な鋳造体用のワックスを試作した.主成分には高融点のパラフィンを用い, カルナウバワックス, ダンマル, みつろうを添加した試作ワックスの熱膨脹, 流れ, 応力緩和などの物理的性質について検討した.側鎖成分を除去した高融点のパラフィンを用いることによって, 内側性部分の収縮率の大きなインレーワックスを作ることが可能である.この場合, 操作性を改善するために, 低融点のパラフィンを少量添加することが望ましい.また外側性部分の収縮を小さくするには, 応力緩和を抑制するカルナウバワックスの添加量を少くして, 他の成分を適切に添加すべきである.
  • 中村 光夫, 本田 成道, 中林 宣男
    1986 年5 巻2 号 p. 252-260
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    著者らは, 4-META(4-メタクリロキシエチルトリメリット酸無水物)のような親水性基と疎水性基を有するモノマーを合成し, 象牙質とレジンとの接着性を向上させる研究をおこなってきた.そして4-META/MMA-TBB系レジンの象牙質への接着において, 酸エッチングにより象牙質コラーゲンを変性させると, 接着強さは6MPaの値しか示さないが, グルタルアルデヒドやFeCl3を用い, タンパク質の高次構造を制御することにより, その接着強さを11〜18MPaまで向上することができると報告してきた.今回は重合触媒にTBBを用いない系の新しい4-META系ボンディング剤の試作をおこなった.その結果, A液MMA:HEMA=80:20中に2wt%4-META, 0.5wt%BPO, B液5wt%グルタルアルデヒドを含むエタノール水溶液中に2wt%p-トルエンスルフィン酸ナトリウムを添加した二液性ボンディング剤が良好な接着性を示し, 歯科領域で多用されているBPO-アミン系触媒の即硬性レジンとの接着において, 10-3溶液で30秒間前処理した象牙質に対し13MPa, 0.5M EDTA2Naで60秒間前処理した場合9MPa, 65%リン酸で30秒間エッチングした場合19MPaの高い接着強さが得られた.
  • 清水 ひとみ, 中林 宣男
    1986 年5 巻2 号 p. 261-267
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    今回の研究では4-META/MMA-TBB系レジンを用いたウシ歯質への接着において適切な前処理法を得るために, 新しいモノマー塗布法が試みた.1つは1回塗布法(今までの方法)であり, モノマー液を前処理された歯面に, レジン泥を盛るに先立って1回塗布する.もう1つの3回塗布法(新しく採用)は, モノマー液をレジン泥を盛るに先立って3回, 前処理された歯面に塗布する.それぞれ次のモノマー液を塗布した後, 処理歯面が乾いてから次の塗布を行う.0.3M EDTA・2Na-0.2M EDTA・Fe・Na(pH7.4)はスメアーレイアーを除くのに1分間の前処理で効果があることがわかった.エナメル質へ13MPa, 象牙質へ12MPaという良好な接着強さが3回塗布法によって得られた.レジンと象牙質のハイブリッドと思われるうすい1μmの層がSEMで確認された.XMAによると象牙質の脱灰層も1μmであることが確認された.
  • 田島 清司, 柿川 宏, 小園 凱夫, 林 一郎
    1986 年5 巻2 号 p. 268-278
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    前報において, クラウン・ブリッジ用Ni-Cr合金の引張強さと伸びは鋳造方法によって大きく変化することを報告した.本報では鋳造方法の違いにより生じた引張特性の変化の原因について検討を加えた.置換アルゴン雰囲気中高周波溶融-吸引加圧鋳造(Ar高周波)を用いた時のみ, 5種類のNi-Cr合金鋳造体の引張強さと硬さとの間に高い相関性が有意に認められた.このことからAr高周波以外の鋳造方法による鋳造体では鋳造欠陥が大きく影響していることがわかった.この影響は鋳造体の断面観察から確認され, 引張特性が低下していた鋳造体の破断面には樹枝状を呈した鋳巣状表面の様相や粒界破面が顕著に認められた.鋳巣状表面の様相は, CrやSi, Mnが比較的少なかった合金では気孔の表面であり, 炭素が極めて多く含まれていた合金では高温割れの表面であるとみなされた.
  • 田辺 直紀, 有馬 嗣雄, 茂木 孝之, 土生 博義
    1986 年5 巻2 号 p. 279-286
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    前報で報告した画像解析システム応用の一例として, アマルガメーターの練和効率について研究した.アマルガム合金粉末と粘土とを, 6種類のカプセル振動型アマルガメーターにより2〜120秒間混和して, 練和時間の異なる試験体を作製した.この混和物の二分割断面を, 実体顕微鏡下にCCDビデオカメラにより撮影し, 画像解析システムによってデジタル画像化した.そしてさらにこの画像にフィルタリング処理と輝度変換処理を行ない, 混和時間に応じた合金粉末の混入程度を, 二分割断面の合金粉末含有面積率を求めて比較した.その結果, パーソナル画像解析システムを用いた混和物断面像の画像処理および画像計測により, 再現性のあるデータが得られ, これにもとづき各種アマルガメーターの練和効率を比較したところ, 振動数以外にも練和効率に影響を与える因子があることが示唆された.
  • 伊東 邦彦, 水沼 徹, 中林 宣男
    1986 年5 巻2 号 p. 287-294
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    分子内に疎水基と親水基とを有するメタクリレートであるHNPM, Phneyl・P, 4-METAは, 歯質と親和性をもつために歯質にとり込まれた形で拡散重合し, 分子レベルで歯質とまざりあって硬化一体化し, その結果高い接着強さが得られる.この歯質接質性モノマーの歯髄に対する影響を調べるために, これらモノマーを数%ずつ添加溶解したMMA-TBB系即硬性レジンを成犬歯牙の頬側面に形成された窩洞に充填し, 術後1, 4, 8週の歯髄の病理学的反応をクリアフィルFと比較して検討した.結果は次の通りである.1)接着性モノマーを含んだMMA-TBBレジンの方がクリアフィルFに比べて象牙芽細胞層の変化・循環障害の程度・炎症性細胞浸潤の程度が術後1, 4週では強かった.これはbaseレジンであるMMAの影響によるものと考えられた.しかしながら術後8週では, 歯髄の反応程度はクリアフィルFとほぼ同等であった.2)接着性モノマーを添加溶解したMMA-TBBレジンを比較した場合, HNPMを溶解したMMA-TBBレジンが, Phneyl・Pや4-METAを溶解したMMA-TBBレジンに比較すると強い歯髄反応を初期に示した.これは歯質に対する接着性モノマーの機能の差によるものと考えられた.また術後8週では, HNPMの症例に窩壁に細菌を認める所見があらわれた.
  • 平野 進, 遠藤 一彦, 平澤 忠
    1986 年5 巻2 号 p. 295-300
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    Ni-Cr合金に最大30%までCuを含有させた7種類の合金を作製し, メッシュグリッドパタンを使ってその鋳造性評価を行った.この方法による鋳造性評価は比較的容易で, 合金間の鋳造性を相対的に評価するには有効であった.Cu含有量の増加に伴い, Ni-Cr合金の固相点と液相点は低下し, その鋳造性は向上した.Ni-Cu合金の機械的性質は, Cu含有量の増加に従って向上するが, Cu20%以下では大幅な向上は期待出来ない.
  • 遠藤 一彦, 平野 進, 平澤 忠
    1986 年5 巻2 号 p. 301-309
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    Ni-Cr合金の耐食性に及ぼすCu添加の影響について調べた.Cuを0〜30wt%含有するNi-Cr合金を作製し, リンゲル液中で50日間にわたり腐食電位, 分極抵抗を測定した.さらに重量法による腐食速度の評価, 原子吸光分析法による溶出成分の定量, X線マイクロアナライザを用いた合金組織の観察を行なった.その結果, Cuを添加することによりNi-Cr合金の腐食電位は貴となり, 腐食速度は小さくなることが明らかとなった.また, Cuを20%以上含有する合金にはCuの偏析が見られ, Cu含有量の少ない相からNiが選択的に溶出することが明らかとなった.平均の分極コンダクタンスと重量減少量から求められた腐食速度の間には比例関係が得られ, 比例定数Kの値は37℃リンゲル液中で26mVとなった.
  • 阿部 義人, 清村 正弥, 永田 勝久, 中林 宣男
    1986 年5 巻2 号 p. 310-316
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    筆者らは4-META/MMA-TBBレジンが歯質への浸透性にすぐれているため大きな接着強さを示すことを報告してきた.本報では, 歯牙硬組織の主成分であるヒドロキシアパタイトと4-METAとの関係を知るため, 4-META/MMA-TBBレジンのアパタイト焼結体への接着を行った.その結果, アパタイト接着表面の表面粗さやカルシウム溶出量が大きい方がより大きな接着強さを有することがわかった.また, 被着面の機械的強度も接着力に影響すると考えられる.10%クエン酸-3%FeCl3溶液による前処理は接着強さの向上を示し, 接着界面におけるレジンの重合への効果の可能性を示唆した.さらに, 4-META/MMA/TBBレジンは一部酸無水物基が加水分解したカルボキシル基を有する4-METを含み, 4-METはアパタイトに吸着されやすいことが明らかになった.4-METAが4-METに変化し, 接着時にアパタイトの凹凸に拡散することが接着力を発揮する原因であろう.
  • 木村 博, 寺岡 文雄
    1986 年5 巻2 号 p. 317-320
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    ポリノルボルネンと空気中および真空中で加熱したポリノルボルネンの物性について検討した.ポリノルボルネンのガラス転移温度は41.5℃で, 空気中の加熱では130℃付近から酸化した.酸化によりハイドロパーオキサイドやカルボニル基が増加した.2θが18°付近の比較的シャープなX線回折ピークは非晶ハローによるものと考えられ, 分子はかなり規則的に配向していると思われる.ポリノルボルネンは二重結合を持ったポリマであることを確認した.
  • 北村 昌敬
    1986 年5 巻2 号 p. 321-335
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2018/04/06
    ジャーナル フリー
    ハイドロコロイド系印象材を用いた場合の吸水膨張や, 二次埋没時の吸水膨張の影響および総合膨張への影響に主眼をおいて, 実際の模型ごと埋没法に準じた使用条件で市販りん酸塩埋没材の3種類について, 凝結膨張, 吸水膨張, 第二埋没時の吸水膨張, 熱膨張, それらからなる総合膨張を調べた.また成分既知の試作埋没材を用い凝結-吸水膨張に伴う変化を観察した.1)寒天印象内で凝結させた時の凝結膨張はすべての場合においてテフロン型内で硬化させた時よりも大きく, 約3〜14倍の数値が得られた.その際専用液で練和した試片の膨張が異常に大きかった.2)寒天印象内で硬化させて大きく膨張した試片, 凝結後に加水して大きく膨張した試片の熱膨張は一般に小さく, 製品によっては収縮するものも認められた.3)りん酸塩埋没材の総合膨張に占める, 各々の膨張の割合は, 凝結途中, および凝結後の吸水膨張が異常に大きくなったため, 必ずしも一定とはならなかった.4)以上の基礎的な実験の結果より実際の模型ごと埋没法による鋳造を行なったところ, 埋没材の種類による変化や, 印象材および, 練和液の種類による差が, 厚さ長さに様々な影響を与えていることが推定された.しかし, 埋没時期による差はみられなかった.
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