抄録
印象採得時の粘膜面における印象圧と, それに影響を及ぼす諸因子との関係を明らかにするため, 平行円板で印象材を圧接するときに生ずる圧力を, ダイヤフラム型圧力変換器を用いて測定するとともに, 流体力学的な解析を同時に行った.
圧力の大きさは, 印象材の粘度, トレーの圧接速度, 印象材層の厚さによって異なり, 定速で圧接した場合には印象材層の厚さの影響が最も大きい.また, トレー圧接力は圧力分布を積分した値であるから, 印象圧を加減するときにはこの圧接力が重要であると思われる.
一方, 圧力分布の形状はトレー形態に依存する.リリーフは圧力分布を平坦化するが, リリーフをどんなに深くしても緩圧の効果には限度がある.これに対し, 遁路の直径が2 mm程度以上であれば, 遁路下の圧力は極端に減少する.
理論的解析によって得られた圧力分布は, 実験結果よりも絶対値においては大きくなったが, その傾向をよく反映している.したがって, この解析方法や基礎的理論は臨床的にも, 印象圧の調節を行う場合の有効な指針になるものと考えられる.