歯科材料・器械
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原著
接着ブリッジ用Ni-Cr-Co-Mo合金の諸性質
長谷部 伸一中村 健吾
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1986 年 5 巻 6 号 p. 773-790

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抄録
 圧縮せん断接着強さを測定する装置を試作して, 2種の歯科用接着剤(スーパーボンドC&B(以下SB C&Bとする), パナビアEX(以下PEXとする))とSUS 304との接着強さを測定し, 接着試験法について検討を加えた.次に接着ブリッジ用合金として可能性があると考えたNi-Cr-Co-Mo四元合金を溶製し, 鋳造したときの機械的性質, 耐変色性を調べ, この中から性質の優れた合金を選び, SB C&Bとの圧縮せん断接着強さを測定した.SB C&BとSUS 304の接着強さは, 接着後の放置温度により変化し, 60℃放置のとき約550 kgf/cm2に達した.20℃, 37℃に放置後4℃, 60℃の水中にそれぞれ120 sの熱サイクルを30回加えると接着強さは放置時よりかえって増加したが, 60℃放置では低下した.PEXとSUS 304の接着強さは, SB C&Bにくらべ小さく, 変動係数は大きかったが, 放置温度による影響は少なかった.
 モリブデン量を15 wt%に一定し, コバルト5〜30 wt%, クロム10〜25 wt%, 残量をニッケルとしたNi-Cr-Co-Mo合金24種のうち優れた機械的性質および耐変色性を持つ合金組成は45±10Ni-20±2Cr-20±8Co-15Mo(wt%)と推定され, この範囲内にあるNo.15, 16, 17合金は, SB C&Bと強固に接着し, 接着ブリッジ用合金として応用の可能性がある.
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© 1986 一般社団法人 日本歯科理工学会
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