歯科材料・器械
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原著
共沈法によるZnO-Al2O3系粉末の調製とリン酸亜鉛セメントへの応用
伴 清治
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1987 年 6 巻 4 号 p. 500-521

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抄録
亜鉛とアルミニウムの塩基性炭酸化物あるいは塩基性塩化物よりなる共沈殿物を, 不均一共沈法および均一共沈法により合成した. この共沈殿物を洗浄, 乾燥, 焼成することによりZnOとZnAl2O4が生成した. ZnO粒子は焼成温度の上昇および粉末中のZnO含有量の増加に伴い大きく成長するが, ZnAl2O4粒子は比較的小さく, 0.5μm以下の粒径であった. この共沈法により調製した粉末を市販リン酸亜鉛セメントの液と練和した場合, ZnAl2O4粒子よりもZnO粒子の方がリン酸との反応性が高かった. したがって粒径の小さいZnAl2O4含有量が多い粉末は硬化時間が遅く, 圧縮強さが小さく, 崩壊率が大きく, 被膜厚さが小さかった. 一方, ZnO量が多い粉末は粒径が大きいため, JISに定められた標準稠度を得るために練和液の量を多くする必要があり, その結果として硬化時間は遅く, 圧縮強さが小さく, 崩壊率が大きくなった. したがってZnO-Al2O4粉末中のAl2O3量が30〜50wt%の場合, 硬化体の物性は良好でありJIS規格を満足した. しかし, 市販品と比較して硬化反応が遅いため, 崩壊率が2〜3倍大きく, セメント表面の中和も遅かった. 一方, クエン酸及び乳酸溶液中での溶解度は市販品とほぼ同等であった.
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© 1987 一般社団法人 日本歯科理工学会
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