歯科材料・器械
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6 巻, 4 号
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総説
原著
  • 市丸 俊夫, 松崎 愛一郎, 江連 徹, 小山田 勇樹, 古川 良俊
    1987 年6 巻4 号 p. 382-390
    発行日: 1987/07/25
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
    三フッ化塩化エチレン (PCTFE) にガラスフィラーを混入した複合レジンおよびそのプライマーを試作した. これはペースト状であり, 歯冠修復用またはポンテック基底面に焼付けて使用することを目的としている. 操作としてはメタルフレームにプライマーを塗布, 焼成し, つぎに複合レジンを築造, 焼成(250〜280℃)する. 本稿では, 本材の技工操作について, また機械的性質, 金属との接着力などについて調べた. その結果, 技工操作は従来の技術範囲内で十分行うことができた. 引張り強さ, 伸び率, 弾性率, ヌープ硬さは, PCTFE10ccにつき0.5gのガラスフィラーを混入した複合レジンを焼成後急冷した試料でそれぞれ322kg/cm2, 43%, 87×102kg/cm2, 7.6であった. また徐冷試料では伸び率は減少するが他は全て増大した. Co-Cr合金との接着力は150kg/cm2が得られた. 本材は口腔内で歯垢や食物残渣などが付着しにくい材質であることを期待して開発された.
  • 中村 均志, 深瀬 康公, 掛谷 昌宏, 西山 實, 大橋 正敬
    1987 年6 巻4 号 p. 391-395
    発行日: 1987/07/25
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
    石こう模型の表面精度を判定するためには, 細線再現性試験法と併用して, 模型平滑面の表面アラサを測定する必要がある. そこで, 光の反射によってアラサを測定する原理から, 非接触型の光学式表面アラサ測定器を試作し, 測定方法について検討した結果, 以下の事柄が判明した. 1) 試作測定器による測定値の上昇に従ってRaの減少が認められた. 2) 最小2乗法により, 測定値とRa値の間に, Y=A+BX (B<O) で表せる負の相関関係を認めた. 3) 上記の相関関係より, 測定器の光源と受光素子との角度は160°が良好と認められた. 4) 以上の事柄より, 試作測定器は細線再現性試験法と併用して, 石こう模型の表面精度の判定基準となり得ることが判明した.
  • 中林 宣男, 神田 和郷
    1987 年6 巻4 号 p. 396-402
    発行日: 1987/07/25
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
    2-メタクリロキシエチル p-メトキシフェニル リン酸 (CH3O-OH) とBPO-スルフィン酸二成分系触媒を含むボンディング剤を使用する場合の象牙質前処理剤の研究を行った. 5wt%のCH3O-OHを含むボンディング剤は酸エッチング象牙質だけでなくEDTA前処理象牙質に対しても高い接着強さを示した. 前処理剤としてのEDTA溶液のうちpH7.4の0.3M溶液が最も良く, このマイルドな溶液で60秒間前処理した象牙質へは, 10wt%のCH3O-OHを含むボンディング剤を用いて最大の接着強さ (14MPa) が得られた.
  • 萬代 佳宣, 嶋田 真次, 杉原 富人, 赤松 伸, 岸田 育恵, 山田 真弓, 豊岡 京子, 大土 努, 楽木 正実
    1987 年6 巻4 号 p. 403-410
    発行日: 1987/07/25
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
    新しい硬化体は, リン酸四カルシウム粉末とクエン酸-マロン酸水溶液の練和で試作された. (1) 粉液比=1.3 (g/g) での練和泥は, 表面のpHが迅速に中性領域に近づきながら, 3〜4分以内に硬化した. (2) 粉液比=1.3以上での硬化体は, 歯科用あるいは骨セメントとして実用可能な強度を得た. (3) 硬化体は, 蒸留水中では少量がアパタイトに転化し, この反応はpH=8.0のリン酸緩衝液中だと速くなり, 1日以内で完全な転化が終了した. (4) 硬化体の溶出液 (蒸留水中, ca.2wt%) の凍結乾燥残渣は, 非晶物質だった. しかしながら非晶物質もまた, pH=8.0のリン酸緩衝液中で完全にアパタイトへ転化した. これらの事実は, 生体活性な歯科用あるいは骨セメントとしての, 本硬化体の可能性を示唆した.
  • 田島 清司, 柿川 宏, 小園 凱夫, 林 一郎
    1987 年6 巻4 号 p. 411-421
    発行日: 1987/07/25
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
    接着性レジンセメントと20種類の歯科鋳造用合金との接着部に対し, 3点曲げ試験と引張試験の二つの方法を用いてその接着強さを評価した. 試験片は37℃恒温水中に24時間浸漬した後, 実験に供した. また, 使用した合金の弾性率, 弾性限および0.2%耐力を3点曲げ試験により測定し, これらの性質と接着部の曲げ剝離力ならびに引張接着強さとの相関を検討した. その結果, 曲げ剝離力によって表される曲げ接着強さには合金間で有意に差が認められたが, 引張接着強さには合金間で差が認められなかった. 接着部の破壊はいずれもレジンセメント中で起き, 凝集破壊の様相を呈していた. 重回帰分析の結果, この曲げ剝離力は0.2%耐力と弾性率に依存しており, これに対し引張接着強さは機械的性質には無関係であった.
  • 中林 宣男, 友田 浩三, 松村 英雄
    1987 年6 巻4 号 p. 422-425
    発行日: 1987/07/25
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
    合金被着体の形状と接着強さの関係について検討することを目的として, 被着体の厚さを変えて接着強さを測定した. 厚さ0.5〜3.0mmの4種のNi-Cr合金の接着強さは0.5mmのものが最も低く, 3.0mmのものが最大であった. 薄い被着体を補強した場合, 明らかに接着強さの向上が認められた. 水中浸漬しない状態ではNi-Cr合金と金銀パラジウム合金では接着強さに差はなく, むしろ厚さに依存していた. 硬化熱処理した金銀パラジウム合金は軟化熱処理したものよりわずかに接着強さが大きかったが, 厚さの影響の方が大であった.
  • 竹沢 保政, 土井 豊, 柴田 俊一, 若松 宣一, 亀水 秀男, 後藤 隆泰, 飯島 まゆみ, 森脇 豊, 宇野 克美, 久保 文信, 生 ...
    1987 年6 巻4 号 p. 426-431
    発行日: 1987/07/25
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
    リン酸4カルシウム塩 (Te-CP) と第二リン酸カルシウム2水塩 (DCPD) の等モル混合物に硬化促進材として, 合成ハイドロキシアパタイト (HAp) を40wt%配合したセメント粉末を20mMリン酸水溶液で練和すると, アパタイトに移行しながら硬化する. この硬化促進材としてのHApが硬化後の物性にどのような影響を及ぼすかを検討した. 硬化促進材として添加するHApは結晶性を変えるため, 40〜100℃まで10℃ごと各温度で合成した. 各HAp添加セメントとも, 硬化促進材であるHApの質に関係なく練和後4時間ですべてHApパターンを示すことがX線回折で確かめられ, その練和物のpHの上昇は, セメント間に速度の違いが若干あるものの, 練和時間内でほぼ中性領域に達することが示された. 硬化時間は, 硬化促進材としてのHApの結晶性が良くなる程, 若干遅くなる傾向があるもののほぼ7〜8分であった. しかしながら, 硬化体の1日後のぬれ圧縮強度は, 添加HApの結晶性に影響され, 結晶性が低い程大きく, 40℃で合成したHAp添加セメントは実用化し得るほどの強度であった. 硬化時ならびに, 硬化後の寸法変化は, 従来のセメントのほとんどが収縮傾向を示すのに対し, 約0.1%までの膨張を示し, 辺縁封鎖性には好ましい結果を得た.
  • 木村 博, 寺岡 文雄, 杉田 順弘
    1987 年6 巻4 号 p. 432-436
    発行日: 1987/07/25
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
    マイクロ波重合用の模型材を開発し, 模型材と義歯の適合性について検討した. 模型材にアルミニウム粉末を10wt%以上添加するとマイクロ波による選択加熱の効果が現れた. しかし, 模型材だけでなく1次埋没用の普通石こうにもアルミニウム粉末を添加すると, 模型と2次埋没用普通石こうの温度差はさらに大きくなり, マイクロ波による粘膜面側からの片面加熱が可能となった. アルミニウム粉末を20wt%添加した模型材と30wt%添加した1次埋没用の普通石こうを用い, マイクロ波を150秒間照射して作成した義歯の適合性は, 従来の模型材を用いて重合した義歯と比べて約20〜50%向上していた.
  • 宮崎 隆, 谷 由美子, 玉置 幸道, 鈴木 暎, 宮治 俊幸
    1987 年6 巻4 号 p. 437-440
    発行日: 1987/07/25
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
    電融カルシア(8A)-メタノール系の鋳型材を用いて純チタンの鋳造実験を行った. 1.コイル状パターンを用いた鋳造性の試験では, 鋳型温度が1,000℃の時に最も良好であった. 2.板状パターンを用いた鋳造体は鋳型と焼き付けのない非常に良好な面性状を示し, その表面粗さは1.2〜1.9μmであった. 3.鋳造体の硬さは, Hv180前後であり, 表層にはHv230〜250程度の硬化層が10〜50μm程度存在していた. 4.X線観察の結果, 鋳型温度が高くなる(800〜1, 000℃)と内部の欠陥はほとんど観察されなかった.
  • 稲用 隆史, 宮崎 隆, 鈴木 暎, 宮治 俊幸
    1987 年6 巻4 号 p. 441-448
    発行日: 1987/07/25
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
    放電加工をテレスコープ義歯製作に応用するために, 放電加工とミリングマシーンによる切削加工特性を比較検討した. ミリングマシーンは貴金属系合金では, 切削面粗さ, 加工速度共に優れ, ピンホール, ガイディンググルーブの形成も容易であったが, 圧や振動の影響が認められた. 卑金属系合金はカーバイドカッターでは能率が悪く, ダイヤモンドカッターでは, 加工能率は改善されるが, 加工面性状は砥粒の粒度の影響を受けていた. またスチールバーでは, ドリリング, グルービングの加工はできなかった. 放電加工では, 卑金属系合金でも貴金属系合金と同様の加工が可能で, 加工面は細かい梨地面を示していた. 細穴専用の放電加工機を用いたところ, ドリリング, グルービングは, 金属の硬さにかかわらず, 能率よく優れた形状の加工が可能であった.
  • 東野 信男
    1987 年6 巻4 号 p. 449-464
    発行日: 1987/07/25
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
    グラスアイオノマーセメントの歯質接着性の特性を明らかにする目的で以下の実験を行った. 即ち, 被験歯の抜去後の保存期間, 接着時の環境湿度, 及びスメアー層がグラスアイオノマーセメントの歯質に対する接着強さにおよぼす影響を検討した. 以上の実験より, 以下の結果を得た. 1.グラスアイオノマーセメントのヒト象牙質に対する接着強さは, コンポジットレジンを使用した場合とは異なり, 被検象牙質の抜去後の保存期間にあまり大きな影響を受けなかった. このことよりin vivoにおいてもin vitroと同程度の接着強さを示すものと推測する. 2.グラスアイオノマーセメントの歯質に対する接着強さは, 接着時の環境湿度の影響により接着強さをわずかに変化させた. しかしながら, コンポジットレジンの場合に比べて受ける影響は少なかった. 3.象牙質表面のスメアー層を除去すれば, グラスアイオノマーセメントの象牙質に対する接着強さはわずかに増加した.
  • 岡崎 邦夫, 西村 文夫, 野本 直
    1987 年6 巻4 号 p. 465-471
    発行日: 1987/07/25
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
    超小型試片の引張試験用ピンバイス型チャックを試作し, 人歯エナメル質試片の直接引張試験を行うとともにダイアメトラル圧縮試験も行って引張強さを求め, 前報で報告した圧縮特性と比較検討し, 次のような結果をえた. 1.エナメル質の引張強さは直接, 間接ともに, 圧縮強さと同様にエナメル小柱の方向の違いによる差が顕著であった. 2.平均引張強さは小柱軸方向Vで21.9MPa, 小柱断面の長軸方向Iで13.9MPa, VとIに直角方向Hで10.4MPaであった. 3.ダイアメトラル試験による間接引張強さはV方向で45.6MPa, I方向で37.7MPa, H方向で25.5MPaであり, 直接引張試験と同様な傾向を示したが, 引張強さの値は直接引張強さの2.1〜2.7倍であった. 4.試作したエナメル質引張試験用チャックは質量が2.4gと軽く, しかも球面座を設けることにより引張試験時に側方力が加わることなく十分有効であったが, 試片がチャック部で破断するなど改良の余地も残されていた.
  • 米山 隆之
    1987 年6 巻4 号 p. 472-480
    発行日: 1987/07/25
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
    著者らは, NiTi系合金及びTi系合金等高融点合金の鋳造に適した鋳造機について既に報告したが, これによってリン酸塩系埋没材を直接使用しても重要な性質を失うことなくNiTi合金を精密鋳造できるようになった. しかし, NiとTiの2元系合金では, その性質が限られるため, 今回の研究では合金側からのアプローチとして, Auの添加によるNiTi合金の諸性質への効果について検討を加え, 医学及び歯学の臨床において, その特性をより広く, 有効に応用することができるような合金の開発を試みた. その結果, Ni-49.4Ti-4〜5Au (at%) 合金は37℃で超弾性を示し, 3%のひずみを与えても元の形状を回復した. これは, 白金加金の約10倍の値である. Ni-49.4Ti-3Au (at%) やNi-49.5〜49.6Ti-4Au (at%) 合金では, 55〜65℃で完全な形状記憶効果が発現した. また, これらの合金は引張強度や伸びなどの機械的性質も良好で, 0.9%NaCl水溶液や1%乳酸に浸漬した際のNiイオンの溶出は, ほとんど認められなかった.
  • 平林 茂
    1987 年6 巻4 号 p. 481-495
    発行日: 1987/07/25
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
    可視光線重合コンポジットレジンの光透過性を改善する目的で, コンポジットレジンの光透過性に及ぼすモノマーとフィラーの屈折率の差およびフィラー粒度の影響を硬化深さ測定から検討した. モノマーの屈折率がフィラーの屈折率に近い組成で, コンポジットレジンの硬化深さは最大値に近づいた. しかし, マトリクスレジンの屈折率はモノマーの重合とともに上昇した. これらの結果から, 光重合コンポジットレジンのモノマー成分としては, フィラーの屈折率よりも約0.012〜0.015低い屈折率を有するモノマーが最も有効であることが示唆された. また, フィラーの大きさがほぼ可視光線の波長と同じオーダーになった時, 硬化深さは最小値を示した. この結果から, 光重合コンポジットレジンのフィラーとしては, ミクロフィラーおよびマクロフィラーの方がサブミクロンフィラーよりも効果的であることが示唆された. さらに, 試作コンポジットレジンに使用したモノマーの光重合活性を, HPLCによる硬化体中の残留モノマー測定により評価した. その結果, 粘度の低いモノマーほど反応性が高くなると推察された.
  • 楳本 貢三, 樋口 慎一, 猪俣 勝廣, 山中 彬, 倉田 茂昭, 山崎 升
    1987 年6 巻4 号 p. 496-499
    発行日: 1987/07/25
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
    石こう硬化体の機械的性質と表面アラサを改善するために, リン酸水素カルシウム・二水和物 (CHPD) とリン酸水素カルシウム (CHP) の添加の影響を調べた. 石こう硬化体では結晶核として添加されたCHPDまたはCHPから微細な石こう結晶の生成が観察された. 超硬石こうの表面アラサは著しく改善され, 機械的強度においても, 圧縮強さを低下させることなく, 曲げ強さが向上した.
  • 伴 清治
    1987 年6 巻4 号 p. 500-521
    発行日: 1987/07/25
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
    亜鉛とアルミニウムの塩基性炭酸化物あるいは塩基性塩化物よりなる共沈殿物を, 不均一共沈法および均一共沈法により合成した. この共沈殿物を洗浄, 乾燥, 焼成することによりZnOとZnAl2O4が生成した. ZnO粒子は焼成温度の上昇および粉末中のZnO含有量の増加に伴い大きく成長するが, ZnAl2O4粒子は比較的小さく, 0.5μm以下の粒径であった. この共沈法により調製した粉末を市販リン酸亜鉛セメントの液と練和した場合, ZnAl2O4粒子よりもZnO粒子の方がリン酸との反応性が高かった. したがって粒径の小さいZnAl2O4含有量が多い粉末は硬化時間が遅く, 圧縮強さが小さく, 崩壊率が大きく, 被膜厚さが小さかった. 一方, ZnO量が多い粉末は粒径が大きいため, JISに定められた標準稠度を得るために練和液の量を多くする必要があり, その結果として硬化時間は遅く, 圧縮強さが小さく, 崩壊率が大きくなった. したがってZnO-Al2O4粉末中のAl2O3量が30〜50wt%の場合, 硬化体の物性は良好でありJIS規格を満足した. しかし, 市販品と比較して硬化反応が遅いため, 崩壊率が2〜3倍大きく, セメント表面の中和も遅かった. 一方, クエン酸及び乳酸溶液中での溶解度は市販品とほぼ同等であった.
  • 安藤 雅康, 山内 六男, 川野 襄二
    1987 年6 巻4 号 p. 522-528
    発行日: 1987/07/25
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
    義歯床と粘膜面の不適合を是正するため, 常温重合レジンで裏装する直接リベース法が広く用いられている. これにはMMA系レジンが使用されており, リキッドとパウダーを練和した時からラジカル重合で反応が進む. しかしながら, 活性剤や抑制剤によりこの重合度は大きく変化する. 本研究では, 電子スピン共鳴法 (ESR) を用いリベース用常温重合レジンの生長ラジカルを直接検討した. その結果, 以下の結論を得た. (1) 37℃の生体温度において, 練和後5.5分でラジカルが最初に検出され, その直後から27分まで急激にラジカル濃度が増大した. その後, ラジカル濃度の減衰が認められたが3,656分以上安定的に残留した. (2) 重合温度が高いほど, 重合反応が促進されラジカルの残留時間が短縮した. また, 最大ラジカル濃度は減少した. (3) 活性剤 (N, N-Dimethyl-p-toluidine) の増量は, 誘導期および生長期での重合反応を促進させたが, 同時に最大ラジカル濃度も増大させた. (4) 抑制剤 (Hydroquinone) の増量は, 最大ラジカル濃度には影響を与えなかったが, 誘導期, 生長期のみならず停止期まで重合反応を遅延させた.
  • 倉田 茂昭
    1987 年6 巻4 号 p. 529-540
    発行日: 1987/07/25
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
    複合材料では, 一般にコア材として粒子または繊維を用いているが, これらの代りに剛性な分子構造をもつ分子をレジン中に分子分散することにより, レジンを強化する方法を開発し, これを分子複合材と名付け, 義歯床用材料への適用性を検討した. 剛性分子としては, 種々の割合の3-メタクリロキシトリメトキシシランとフェニルトリエトキシシランから, ラダー構造をもち, MMAに可溶なシロキサンポリマーを調製した. これを種々の割合でMMAと混合し, バルク重合により得られた複合レジンの理工学的性質について, PMMA, Bis-GMA-およびTMPT-MMA共重合体と比較した. その結果, シロキサンラダーポリマーを10〜15wt%分子分散した複合レジンは, 圧縮, 間接引張および曲げ強さなどの機械的性質がPMMAに比べ, 20〜40%向上した. またBis-GMA-およびTMPT-MMA共重合体と比較した場合, 曲げ強さが20%, 曲げ弾性率が15%向上した. この差は複合レジン中の架橋構造によるものではなく, 剛性な分子の複合の効果と考えられる. 以上の結果から, シロキサンラダーポリマー・PMMA分子複合レジンは, 強度だけでなく, 優れた靱性を与えることがわかり, 義歯床用材料として期待される.
  • 玉置 幸道, 宮崎 隆, 鈴木 暎, 宮治 俊幸
    1987 年6 巻4 号 p. 541-550
    発行日: 1987/07/25
    公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー
    前報では往復運動を用いた複合研削法が操作性, 安全性の点から実用的であることを報告した. 本報では新たにハンドピース型研削装置を試作し, Co-Cr系, Ni-Cr系両合金に対して, 砥石の粒度を細かくしたビトリファイド砥石とレジノイド砥石を用い, 電流密度を変えて複合研削を行い研削面性状を検討した. 両合金とも砥石の粒度を細かくすることにより表面粗さの改善が見られたが, 電流密度の増加に伴う電解効果は両合金間で異なっていた. 複合研削面は研削荷重の影響を受け両合金とも荷重500gでは電解研磨面, 荷重100gでは機械研削面が強く現れていた. レジノイド砥石は導電性ではビトリファイド砥石よりも劣っていたが, 砥石の製作が容易であるという利点が認められた. 往復運動を利用した複合研削は研削荷重, 砥石の粒度, 電流密度を適正に設定すれば, 研削量と研削面性状の点で非状に実用性の高い方法であることが判明した.
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