抄録
変性コラーゲンとしてのゼラチン存在下で, フッ素化アパタイトを合成 (60°C, pH7.4) し, その物理化学的性状について検討した. フッ素化アパタイトの結晶性は, 全体的にゼラチン濃度が増えると低下した. この傾向は, 高フッ素含有領域のa軸方向において顕著に認められた. しかしながら, ゼラチン濃度が増加しても, 生成したアパタイトの化学組成や格子定数には, きわだった差は認められなかった. DTA, IR分析の結果でも, ゼラチンの影響はほとんど認められなかった. 見掛けの溶解度も, フッ素化度の増加に伴って著しい減少を示したが, ゼラチン濃度が変わっても同一曲線上に載った. これらの結果より, アパタイトのゼラチン分子へのエピタキシー結晶は期待できず, 本実験条件下でのゼラチンの役割は, 単に溶液中にあって, アパタイトの結晶成長を抑制するにすぎない事が示唆された.