関西病虫害研究会報
Online ISSN : 1883-6291
Print ISSN : 0387-1002
ISSN-L : 0387-1002
原著論文
施設トマトにおけるタバコカスミカメを利用したタバココナジラミの総合防除体系の有効性
中野 亮平土井 誠石川 隆輔
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 61 巻 p. 113-119

詳細
抄録

施設トマトのタバココナジラミに対するタバコカスミカメ,天敵温存植物バーベナ‘タピアン’および選択性薬剤を組み合わせたIPM体系の有効性を,3月定植~7月栽培終了の作型において評価した。3区画に区切られた試験用ガラス温室内の養液栽培ベッドに大玉トマトを定植し,ⅰ)IPM体系区(タバコカスミカメ放飼+バーベナ設置+選択性薬剤),ⅱ)殺虫剤散布区(殺虫剤の定期散布),ⅲ)対照区(無防除の区として設置したが6月中旬にタバココナジラミが多発したため薬剤を1回散布)を設定して防除効果,薬剤散布回数の削減効果,タバコカスミカメによるトマトへの被害の有無などを調査した。その結果,トマト上のタバココナジラミは,IPM体系区と殺虫剤散布区で5月下旬~6月中旬の成虫密度および6月以降の幼虫密度が対照区と比べて有意に低くなった。IPM体系区と殺虫剤散布区のタバココナジラミ密度は期間の大部分で有意な差は認められなかった。IPM体系区では,トマトおよびバーベナ上でタバコカスミカメの定着と増殖が確認され,バーベナ上では成虫密度が常に低かったことから,羽化成虫がトマトへ移動した可能性が示唆された。TYLCV感染率は処理区間で有意な差は認められなかった。トマトの各果房段位の着果数は処理区間で有意な差は認められず,タバコカスミカメによる影響は確認されなかった。薬剤散布回数はIPM体系区が1回,殺虫剤散布区が5回だった。以上のことから,タバコカスミカメの利用を核とした本IPM体系は,化学合成殺虫剤中心の薬剤防除体系に対する有効な代替防除手段であると考えられた。

著者関連情報
© 2019 関西病虫害研究会
前の記事 次の記事
feedback
Top