抄録
上顎レジン全部床義歯は金属床義歯に比べ一般に広く用いられている.しかし, レジン床義歯は床口蓋部が厚いため患者に対し違和感を与える要因の一つとなっている.また, レジン床義歯は剛性, 疲労強度が低いため短期間に破壊に至る例が多い.そこで本研究では上顎レジン全部床義歯の剛性, 疲労強度の向上を目的に義歯床の強化と薄床化について検討した.強化義歯床はカーボン繊維およびアラミド繊維を強化材とした薄床化義歯を作製した.そして, 静的および疲労試験を行い, その特性について基礎的な検討を行った.その結果, CF, AFクロス強化義歯床の口蓋部は通常のレジン床義歯に比べCFクロス強化義歯床で50%, AFクロス強化義歯床で40%の薄床化となる.静的曲げ強度および剛性は通常のレジン床義歯に比べ同程度の強度が得られた.疲労強度はCF, AFクロス強化義歯床で通常のレジン床義歯(ND type)に比べCFRND typeで1.86倍, AFRND typeで1.76倍と向上する.