抄録
象牙質コラーゲンの変性を惹起させず, 高い接着強さを期待できる前処理剤を探索することを目的として, Fe3+, Co3+, Cu2+を含むEDTA・NH_4溶液を前処理剤として検討し, pH7.4に調製したEDTA3-2(Fe・NH4), ETDA3-2(Co・NH4)及びEDTA3-2(Cu・NH4)で前処理した象牙質に対し, 脱灰Ca2+量, 接着強さ及び脱灰面のSEM観察を行ない, それぞれの相関を調べた.その結果, 脱灰Ca2+量と接着強さに相関は認められなかった.EDTA3-2(Fe・NH4)で処理した場合, 脱灰Ca2+量は少なく, スメアー層が一部残存した状態でも, 4-META/MMA-TBB系レジンが13MPaと強く接着することがわかった.これは象牙質へのレジンの接着において, スメアー層の完全除去が必ずしも高い接着強さを得るための不可欠な要因ではないことを示唆するものである.