発達心理学研究
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子どもにおける障害物回避行動の発達に関する実験的研究
根ヶ山 光一
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2000 年 11 巻 2 号 p. 122-131

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抄録

幼児における障害物の回避行動とその機制について, 歩行の妨害となる位置にあるバーを回避させることにより発達的変化と性差を調べた。実験Iにおいては, 3歳から7歳までの幼児が対身長比10%から70%の高さまで10%刻みのいずれかのレベルに水平に設置されたバーを適切に回避・通過しうるか否かが観察された。その結果, バーへの接触は年齢とともに有意に減少したが, 反応所要峙間は5歳で一過的に増大し, その後減少した。また反応所要時間は5歳時点で男児より女児に大きかった。反応所要時問や失敗の生起からみて対身長比40〜50%のレベルがもっとも判断の困難なレベルであった。実験Iにおいては, 目の高さのバーを4歳から6歳までの子どもに電動で接近させ, その場で身をかがめて受動的に回避させる場面と, 静止したバーに子どもが能動的に接近しくぐって回避する場面での回避行動を比べた。その結果, 受動回避の方が障害物との問に明らかに大きな距離をあけること, 5歳男児において能動・受動的回避間で距離の取り方にとりわけ大きな落差が見られたこと, 男児における能動的回避案件下で, バーからの隔たりが小さい子どもに普段の事故傾向が大きいことが明らかになった。これらの結果から, 障害回避行動の発達的推移とその性差が, 子どもの事故行動との関連で, とくにアフォーダンスの発達と身体を用いた環境対処性という行動的自律の側面から考察された。

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© 2000 一般社団法人 日本発達心理学会
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