発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
11 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 高橋 功
    原稿種別: 本文
    2000 年11 巻2 号 p. 89-99
    発行日: 2000/10/20
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    「地面は平たい」という信念と「地球はまるい」という科学的知識は直感的に食い違う。子どもは, 地球の形をどのように理解しているのだろうか。「地面は平たい」という知識と「地球はまるい」という知識を自分なりに統合した代替モデルを構成しているという見解 (Vosniadou, & Brewer, 1992) と, それぞれの知識を別々に保持したまま統合していないという見解 (中島, 1995) が提出されている。本研究は, (1) 子どもが地球の代替モデルを構成しているか否かを, 想定される代替モデルを提示して判断させることによりとらえ, (2) そこで選択されたモデルが様々な質問で一貫的に用いられるか否かについて検討した。小学l, 3, 5年生の子どもに, 地球のモデルの図への評価と, 地球に関連する様々な質問への回答を求めた。その結果, 主に次の結果が得られた。 (a) 多くの子どもが特定のモデルの図のみを青定する。(b) 代替モデルの図ではなく, 科学的に正しい球体モデルの図を肯定する了どもが多い。 (c) 様々な質問間で一貫的に回答する子どもは少ない。代替モデルの一貫的な使用は, それほど一般的な現象ではなく, 別々に保持していた信念と科学的知識を次第に関連づけて球体モデルを構成する子どもも多いと考えられた。
  • 遠矢 浩一
    原稿種別: 本文
    2000 年11 巻2 号 p. 100-111
    発行日: 2000/10/20
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 同一の発達障害児に対して行う個別形態, 集団形態の遊戯療法において, 個々のセラピストが伝達・応答行動をどのように調整しているのかについて検討することであった。発達障害を有する3名のクライエントとそのセラピストの個別, 集団セラピー各々20分間における発話・行動を文字転写し, 5カテゴリー, 11項日に分類した。そして, それらの発話総数に対する出現率 (発話率) について, セラピー形態との関連性から分析した。その結果, 1) 集団セラピーよりも個別セラピーにおいて, セラピストの発話数が多いこと ; 2) 個別では, クライエントの発話を明確化したり, 遊びのモデルを示すなどの発話が多いが, 集団では, 場の状況をクライエントに説明するための発話が多いこと; 3) 個別で, 言語能力の低いクライエントに対して平叙形のリフレクションを主に用いたセラピストが, 集団になると疑問形のリフレクションをより多く用いるようになる一方, 個別で言語能力の高いクライエントに対して疑問形のリフレクションを多く用いたセラピストが, 棄団になるとそれを用いなくなること; 4) 個別ではYes/No質聞が多用される一方, 集団ではWh質問が多く用いられること, が明らかとなった。これらの結果は, セラピーの形態とセラピストの集団活動志向性との関連から考察された。
  • 高垣 マユミ
    原稿種別: 本文
    2000 年11 巻2 号 p. 112-121
    発行日: 2000/10/20
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 図形の属性である高さを取り上げて, 算数の授業で「三角形の高さ」を教授される以前の子どもたちが, どのような高さの概念を表象しているかを調査し, この教授前から表象されている高さの概念と, 教授される三角形の高さの概念との関連性を検討することである。課題には, 日常物の「本」と平面図形の「三角形」を敢り上げ, 小学1年生から6年生の272名の子どもたちに対して, 高さを考える際の理由づけが求められた。その結果, a) 三角形の高さ」を未習の1〜4年生については, 高さの概念は, 目常生活における白然物 (木, 山等) や人工物 (ピル, 東京タワー等) と結びつけられていること, b) 高さの表現方略は, 「高さは高い所の一点で示される」という考えから, 「高さは基準線からの重直方向で示される」という考えへと, 学年進行に伴って変化がみられること, c) 三角形の高さを学習した直後の5年生の約半数は, 日常的経験から得られた高さの概念と, 教授された三角形の高さの概念を互いに関連づけられない状態にあること, この状態が続き6年生になると, 後者の概念が前考の概念に取り込まれる可能性があることが示唆された。
  • 根ヶ山 光一
    原稿種別: 本文
    2000 年11 巻2 号 p. 122-131
    発行日: 2000/10/20
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    幼児における障害物の回避行動とその機制について, 歩行の妨害となる位置にあるバーを回避させることにより発達的変化と性差を調べた。実験Iにおいては, 3歳から7歳までの幼児が対身長比10%から70%の高さまで10%刻みのいずれかのレベルに水平に設置されたバーを適切に回避・通過しうるか否かが観察された。その結果, バーへの接触は年齢とともに有意に減少したが, 反応所要峙間は5歳で一過的に増大し, その後減少した。また反応所要時間は5歳時点で男児より女児に大きかった。反応所要時問や失敗の生起からみて対身長比40〜50%のレベルがもっとも判断の困難なレベルであった。実験Iにおいては, 目の高さのバーを4歳から6歳までの子どもに電動で接近させ, その場で身をかがめて受動的に回避させる場面と, 静止したバーに子どもが能動的に接近しくぐって回避する場面での回避行動を比べた。その結果, 受動回避の方が障害物との問に明らかに大きな距離をあけること, 5歳男児において能動・受動的回避間で距離の取り方にとりわけ大きな落差が見られたこと, 男児における能動的回避案件下で, バーからの隔たりが小さい子どもに普段の事故傾向が大きいことが明らかになった。これらの結果から, 障害回避行動の発達的推移とその性差が, 子どもの事故行動との関連で, とくにアフォーダンスの発達と身体を用いた環境対処性という行動的自律の側面から考察された。
  • 呉 宣児
    原稿種別: 本文
    2000 年11 巻2 号 p. 132-145
    発行日: 2000/10/20
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー
    本研究では, 日常生活の文脈で個々人が抱く原風景はどのようなものなのかを口述の調査方法で調ベ, 探っている。本研究は, 原風景を説明していくための概念の産出や概念間の関係を明らかにして構造化していく, 仮説理論生成型の研究であろ。調査対象者である語り手は, 韓国済州道で生まれ育った41歳の男性であり, 間き手は筆者である。主に語りの逐語録を用いて分析した結果, その叙述内容に基づいて3種類の語りを見出し, それぞれを風景としての語り, 出来事としての語り, 評値としての語りと命名し検討した。また, 叙述様式として使われる5つの語りタイプを見いだし, それらを風景回想タイプ, 行為叙述タイブ, 説明演説タイプ, 事実説明タイプ, 評価意味づけタイプに命名し検討した。さらに, これら語りの種類と語りタイプの間に一定の関係があることを見いだし, 原風景の構造化を行った。結果の考察から, 1) 日常生活の中で原風景は物語りとして現れること, 2) 原風景の内容は風景的・出来事的・評価的要素で構成されること, 3) 原風景を語る際の場面の状況や叙述内容によって, 叙述様式 (語りタイプ) が変わりうることを生成された仮説として提示した。
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