発達心理学研究
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母親が子どもをイヤになること : 育児における不快感情とそれに対する説明づけ
菅野 幸恵
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2001 年 12 巻 1 号 p. 12-23

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抄録

母親が子どもに対してもつ否定的感情は,子どもの成長や母親としての適応に悪影響を及ぼすだけなのだろうか。本研究では,母親が育児の中で当たり前に経験する感情として子どもに対する不快感情を取り上げ,不快感情が母子関係の中でポジティヴな役割を果たしている可能性について,不快感情の内容とそれに対する説明づけ(accounting)から記述的に検討した。まず,母親の不快感情は育児場面のどのような状況での,子どものどのような行動に対して生じているのかについて検討した。不快感情は就寝時や食事中など日常的課題場面での子どもの不従順な行動や,課題がない場面での以前と変化した行動に対して生じていた。次に受け止め方を不快感情と説明づけとの関連から検討した。母親は不快感情を契機に子どもの育ちや自らの関わり方を振り返っており,その振り返り方は課題の有無によって異なることが明らかとなった。日常的課題場面での行動に対して母親は自分のやり方を確認した上で,そのやり方を貫こうとしているが,課題なし場面での行動には譲歩的であることが明らかになった。二つの振り返り方により子どもの見方や自分の関わり方の安定や修正が図られていることが考えられた。

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© 2001 一般社団法人 日本発達心理学会
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