発達心理学研究
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慢性疾患患者におけるモーニング・ワークのプロセス : 段階モデル・慢性的悲哀(chronic sorrow)への適合性についての検討
今尾 真弓
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2004 年 15 巻 2 号 p. 150-161

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抄録

本研究においては慢性疾患患者におけるモーニング・ワークのプロセスに焦点を当て,2つのモデル,すなわち,段階モデルおよび慢性的悲哀(chronic sorrow)への適合性について検討を行った。青年期から成人期の19歳から34歳の14名の慢性腎臓疾患患者を対象に半構造化面接を実施し,発病後の心理過程に焦点づけたライフ・ストーリーを聴取し,2つのモデルヘの適合性を検討した。結果,いずれのモデルについても,慢性疾患患者のモーニング・ワークのプロセスヘの全面的な適合性は示されず,今後は2つのモデルを取り入れ,慢性疾患患者により適合する代替モデルを作成していく必要があると思われた。また,代替モデル作成にあたって考慮すべき要因として,次の2点が示唆された。すなわち(1)慢性疾患患者のモーニング・ワークのプロセスは,従来よりも長いタイム・スパンの中で捉える必要があり,「受容・終結」という方向性を持ちながら,段階的に移行していくと考えられる,(2)プロセスの最終段階である病気の「受容・終結」のあり方については,文化的要因も考慮の上,より幅を持たせながら考えて行く必要があると考えられる。

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© 2004 一般社団法人 日本発達心理学会
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