発達心理学研究
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幼児における自分自身の表情に対する理解の発達的変化
菊池 哲平
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2004 年 15 巻 2 号 p. 207-216

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抄録
幼児は自分自身が表出した顔の表情についてどのぐらい正確に理解しているのか,という問題を明らかにするため,幼児自身が表出した顔の表情写真をその幼児本人に呈示する自己表情認知課題を行い,パフォーマンスの発達的変化を検討した。3歳から6歳までの幼児58名を対象に,線画やイラストなどによる表情図や他者の表情写真による表情刺激と,あらかじめ言語指示によって撮影した自分自身の表情写真を呈示した。その結果,年少の幼児でも表情図や他者写真の表情に対する基本的な意味理解と識別は可能であったが,自分自身の表情については必ずしも正確には理解しておらず,こうしたコンピテンスは3歳以後ゆっくりと徐々に獲得されていくことが示された。また自分自身の表情については「怒っている」表情が最も理解しやすいことが明らかとなり,表情図や他者写真による表情認知課題とは異なることが示唆された。また自分自身の表情の理解には線画による表情図の理解と最も相関が高く,このことから自己表情の理解は表情の表象的イメージの獲得と関連があることが示唆された。
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© 2004 一般社団法人 日本発達心理学会
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