発達心理学研究
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女子青年がもつ現在の対人的枠組みと生育史に記述された母親及び友人との関係の質との関連
山岸 明子
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2004 年 15 巻 2 号 p. 195-206

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抄録

過去の対人関係に関する再構成が現在の対人的枠組みの影響を受けるのかを明らかにするために,その両者の関連を97名の女子短大生を被調査者として検討した。現在の対人的な枠組みは内的作業モデルが安定しているか-不安定かの観点から質問紙によってとらえ,過去の対人関係のとらえ方は,本人が自由に記述した生育史から母親及び友人との関係の質を愛着の安定性・不安定性の観点から査定したものを用いた。主な結果は次の通り:1)現在の安定した枠組みと回避的な枠組みに関しては,自らの生育の過程についての語りが関連していたが,不安な枠組みでは関連が見られなかった。2)過去の葛藤関係の記述は,現在の枠組みとの関連が弱かった。3)母親-友人との関係の認知は共通の傾向をもつ部分と異なる部分が見られた。4)現在の対人的枠組みと自らの生育の過程についての語りの関連は,現在の枠組みの安定性が低い群の方がより強く,特に回避群の語りには問題があるものが多かった。以上の結果について愛着理論や自伝的記憶の研究と関連させて,考察がなされた。

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© 2004 一般社団法人 日本発達心理学会
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