発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
母子の会話の中で構成される幼児の自己 : 「自己と他者との関連づけ」に着目した1事例の縦断的検討
小松 孝至
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2006 年 17 巻 2 号 p. 115-125

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抄録

本研究では,保育園に通園する女児1名とその母親が,保育園からの帰宅時を中心に,母親の運転する車内で録音した会話の記録(4歳4ヶ月〜5歳8ヶ月,のべ153日分,34時間)から,保育園で出会う友人と女児自身が関連づけて描かれる会話事例を分析し,会話における対象児の自己の構成とその発達的変化について考察した。50事例を分析した結果,能力,ままごとや演劇での役名などにもとづいて,対象児と友人が対比される表現がしばしばみられた。この表現を中心に発達的な変化を検討したところ,記録開始の時期には対象児自身と友人を単純に挙げるだけであった表現が,次第に対比の基準とは異なる観点からの情報が加えられて複雑化してゆき,最終期には,対比に加えて挙げられた友人の特徴を描くさまざまな説明や物語が組み込まれた会話事例がみられた。また,母親の役割も,子どもの表現を直接修正する支援者的な側面が弱まり,挙げられた友人や対象児について共同で話題を展開する,話し相手としての側面が強くみられるようになった。

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© 2006 一般社団法人 日本発達心理学会
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