発達心理学研究
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乳児との接触未経験学生のあやし行動 : 音声・行動分析学的研究
中川 愛松村 京子
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2006 年 17 巻 2 号 p. 138-147

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抄録
養育者が乳幼児と関わりあう場合,大人に対する場合と異なる行動をする。一つは,声が高くなったり,発話速度がゆっくりになるmothereseという音声を発する。もう一つは,眉を上げたり口を大きく開けて顔の表情を誇張するといったmultimodal mothereseという行動で,養育者はこれらを直観的に行う。そこで本研究では,養育者にみられるこれらの行動が育児未経験で乳児との接触経験のない学生においてもみられるか否かを明らかにする目的で研究を行った。乳児との接触経験がない男子学生(18〜24歳)18名,女子学生(18〜22歳)14名を被験者とし,生後3〜4ヶ月の男児1名を対象乳児とし,実際に乳児をあやす場面で,学生が(1)どのようなあやし行動を行うのか,(2)どのようなあやし言葉を発するのか,(3)その音声にmothereseが出現するのかについて調べ,それらに(4)男女差はみられるのか検討を行った。男女とも乳児の機嫌が悪くならなかった学生は,multimodal mothereseとして知られる非接触的あやし行動や遊戯的音声を発言しながら乳児と関わっていた。一方,男女ともに乳児の機嫌が悪くなった学生は,身体運動的なあやしや接触的あやし行動,注意喚起や受容的な発言をしていた。しかし,そのどちらにおいても,男女ともにmothereseが出現していた。即ち,乳児との接触経験がなくてもmothereseが出現することが明らかになった。
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© 2006 一般社団法人 日本発達心理学会
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