発達心理学研究
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青年期から成人期にかけての社会への移行における社会的信頼の効果 : シティズンシップの観点から
白井 利明安達 智子若松 養亮下村 英雄川崎 友嗣
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2009 年 20 巻 3 号 p. 224-233

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抄録
本研究の目的は,社会的信頼が青年期から成人期にかけての発達としての社会への移行を促すことができるかどうかを検討することである。社会的信頼とは社会が信頼に足るとする信念のことをいう。社会的信頼は,社会が人々の自由な結合からなりたつとするシティズンシップの観点から重要である。23歳から39歳の4年制大学または短期大学を卒業した大卒者8,336名(男性と女性と含む)に対してネット調査による質問紙調査を実施した。社会的信頼は1つの文章を完成させる文章完成方法で測定された。その結果は以下のとおりである。まず,第1に,社会的信頼は,社会に移行した結果として高められるだけでなく,社会への移行を促進する原因となる要因でもあることが明らかにされた。第2に,結婚していること,収入が多いこと,出身大学の難易度が高いこと,大学時代における社会関係資本が社会的信頼を高めていた。今後は社会的信頼が社会移行を促すメカニズムの解明が課題とされた。
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© 2009 一般社団法人 日本発達心理学会
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