発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
年をとるとなぜ皺や白髪が増えるの? : 老年期特有の身体外観上の加齢変化についての幼児の理解
中島 伸子
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 21 巻 1 号 p. 95-105

詳細
抄録
素朴生物学研究では,加齢にともない身体サイズが増大するという生物の成長現象については,就学前の幼児でもかなりの程度理解していることが示されてきたが,老化にともなう加齢変化の理解については未解明であった。本研究の目的は,幼児は老年期特有の身体外観上の加齢変化-皺の増加・毛髪の変化-をどのように理解しているかを検討することであった。26名の4歳児,33名の5歳児,24名の大学生を対象として調査を行った。若年成人から老年期においては,成長期に特徴的な身体サイズの増大よりも,皺の量・毛髪の加齢変化が生じやすいことの理解は,4歳ではできないが,5歳から可能であることが示された。さらに,皺の量と毛髪の加齢変化の原因について,もっともらしい説明を選択させる課題を全年齢群に対して行ったところ,4歳児では明確な傾向はみられないが,5歳児は大学生と同様に身体内部的原因(髪の毛を作る体の力が弱くなるから毛髪が減少する等)を人為・外部的原因(髪の毛を切るから毛髪が減少する等)や心理的原因(心配な気持ちになることが多いから毛髪が減少する等)より好む傾向が明確にみられた。これらの結果は,老年期特有の身体外観上の加齢変化についての理解は4歳から5歳にかけて大きく変化することを示唆する。こうした発達的変化について,素朴生物学的概念の発達,特に生気論的因果の獲得という観点から考察した。
著者関連情報
© 2010 一般社団法人 日本発達心理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top