発達心理学研究
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5,6歳児における誤信念及び隠された感情の理解と園での社会的相互作用の関連
溝川 藍子安 増生
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2011 年 22 巻 2 号 p. 168-178

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抄録
本研究では,5,6歳児102名を対象に,心的状態の理解と園での社会的相互作用の関連について検討した。心的状態の理解については,幼児を対象に個別に誤信念課題及び隠された感情課題を実施し,社会的相互作用については,各児のクラス担任を対象に,担当児の園での行動に関する質問紙調査を実施した。社会的相互作用の尺度項目について因子分析を行なった結果,「同情・共感」因子,「仲間関係」因子,「仲間からの受容」因子の3因子に分かれることが示された。月齢,性別,言語能力を統制した偏相関分析の結果,一次の誤信念の理解は,「同情・共感」因子及び「仲間からの受容」因子との間に有意な正の偏相関があることが示された。さらに,一次の誤信念の理解度別に,月齢,性別,言語能力を統制した偏相関分析を行なった結果,一次の誤信念の理解度高群においては,隠された感情の理解は社会的相互作用と関連しなかったのに対して,一次の誤信念の理解度低群においては,隠された感情の理解と「同情・共感」因子及び「仲間関係」因子の間に有意な負の偏相関が認められた。これらの結果から,誤信念の理解が5,6歳児の円滑な社会的相互作用の構築の基盤となっていることが示された。また誤信念の理解が未発達な子どもにおいては,隠された感情の理解は必ずしも社会的相互作用の発達にポジティブな影響をもたらさないことが示唆された。
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© 2011 一般社団法人 日本発達心理学会
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