発達心理学研究
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障害研究における発達段階論の意義 : 自閉症スペクトラム障害をめぐって
赤木 和重
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2011 年 22 巻 4 号 p. 381-390

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抄録

本稿の目的は,障害研究における発達段階の意義を再検討することであった。定型発達児と同様の発達段階を想定しにくい自閉症スペクトラム障害を対象とした。第一に,田中昌人らによる「可逆操作の高次化における階層-段階理論」をとりあげ,障害領域における発達段階論の特徴を検討した。第二に,発達段階論に代わって台頭し,障害特性論の象徴でもある「心の理論」障害仮説を検討した。「心の理論」障害仮説は,領域普遍・質的変化という発達段階の中核的な構成概念を否定したところで構成されていることを述べた。第三に,「心の理論」障害仮説を批判する形で出されてきた知見を紹介し,自閉症の障害を説明する際には,機能連関・発達連関という視点が重要であることを指摘した。以上をふまえ,機能連関・発達連関を想定した場合,実践のあり方がどのように変容しうるのかを検討した。具体的には,ある障害がみられる能力のみを支援するのではなく,その障害を生起させている発達連関・機能連関に働きかける支援がありうることを提起した。

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© 2011 一般社団法人 日本発達心理学会
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