発達心理学研究
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幼児の自律的な情動の調整を助ける幼稚園教師の行動 : 幼稚園3歳児学年のつまずき場面に注目して
田中 あかり
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2013 年 24 巻 1 号 p. 42-54

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抄録

本研究は,幼児が幼稚園生活の中で遭遇する葛藤や小さな混乱の場面を「つまずき」場面として,幼児にとっての情動的な場面で教師がどのように関わっているのかに注目し,幼児期の子どもの情動調整の発達を促す大人の行動を探索的に明らかにしたものである。幼稚園の3歳児学年1クラス26名の子どもたちと教師2名のやりとりを縦断的に観察し,観察記録とその観察場面についての教師へのインタビュー記録の2つのデータについて心理学的エスノグラフイーの手法を採用して分析を進めた。また分析の過程では教師の行動の機能的分析を実施した。その結果,幼児の「つまずき」場面における教師の関わりの中には幼児を肯定したり情動を立て直すまでの全プロセスに関わったりするような関わり以外に幼児を突き放す行動があることが見えてきた。さらにその中でも本来の行動や言葉が意味することとは異なることにその行動の目的があると推測される教師の「突き放す行動」に注目し,これらの行動の機能的分析を実施した。その結果これらの行動は幼児に"混乱の落ち着き""悲しみ・悔しさの助長""情動の出し方の転換"という変化をもたらしていたことが明らかになった。これらの結果から教師の「突き放す行動」の機能として,幼児の喚起された情動を瞬間的に弱め,幼児自身がその問題に向き合い自律的に情動を調整するきっかけを作る働きがあることが示唆された。

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© 2013 一般社団法人 日本発達心理学会
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