抄録
本研究は,青年期後期から成人期前期における自己の発達の特徴を,Keganの構造発達理論に基づいて検討することを目的とした。青年期後期40名,成人期前期(25-35歳)40名の参加者に,日本語版の主体-客体面接とエリクソン心理社会的段階目録検査を実施した。まず参加者の大部分は,Keganの構造発達段階における第3段階から第4段階の間の移行とされる段階にあることが示された。そして,年齢とKeganの構造発達段階の間に,正の関連が見受けられた。次に本研究では,Keganの構造発達段階とEriksonの心理社会的危機の関連について検討した。その結果,Keganの構造発達段階とEriksonの勤勉性,アイデンティティの心理社会的危機が解決されている感覚,および全体的なアイデンティティの感覚の間に,正の関連があることが示された。これらの結果について本研究では,青年期後期から成人期前期における,Keganに依拠した自己の発達およびEriksonに依拠したアイデンティティの発達の観点から考察を行った。