抄録
生得的な障碍を持つ者は,対人関係の中で後天的に更なる障碍を形成するリスクを有する。自閉症児はその最たる例であるが,それゆえに自閉症児への関係支援は対人関係の障碍の軽減や他機能の発達だけでなく,障碍特性そのものの軽減にも有効であると考えられる。本研究では対人関係の障碍の顕著な自閉症児A児(CA10:5~11:11)に対し,関係支援の基盤となるべく,養育者以外の他者(関与者)が特定二者となることを目指して関与を行い,両者の関係性の変容に伴う,主体的能力の発達や障碍特性の変容の関連及び特定の他者の影響を考察した。結果は以下の通りである。①他者認知の発達や原叙述の指差しや提示行動の表出に見られる象徴的思考の発達が観察された。②障碍特性の1つであるこだわりは,その強度及び頻度が低減し,質的な変容も観察された。③他者(児)との関わりは,快の情動が付随した対人経験の積み重ね,他者の配慮性,特別な他者の存在によって,関われる時間が延び,快の情動を必ずしも前提としない関わりを持つことが可能となっていった。これらのことから,自閉症児と特定の他者との関係の発達は,関係だけが発達するものではなく,その中で個の能力の発達や障碍特性の変容が生じるものであることが明らかとなった。加えて,これらの変化を支える者として,④関与者は「愛着対象」,「移行対象」,「自閉対象」という多重な意味を持つことが示唆された。