抄録
本研究では,乳幼児を抱える母親の地域の子育てグループへの参加過程を母親の居場所という視点から示し,当事者間で展開される支援として母親が得た体験を理解し,そこから支援者のあり方を考察することを目的とした。分析の対象者は,子育てグループの運営に携わった経験のある母親11名であり,子育てグループにおける居場所と参加のあり方に関して半構造化面接を行った。修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた分析の結果,6つのカテゴリが得られ,【子育てグループとの出会い】から【一参加者としての交流】,【居場所となる】,【運営への参加】,【主体的な運営】,そして【子育て支援の展開】に至るという参加過程を示した。子育てに悩む一母親が運営に参加するという転換期を迎え,支援をする側へと変化する姿が捉えられた。この背景には,子育てをする一母親としての学習と,地域の子育て支援者としての学習という2つの学習過程が考えられた。また母親の居場所は,子どもとともに受容され,本来の自分を取り戻す場所であることに加えて,担った役割を達成し,充実感が得られるというような居場所へと変容することが示唆され,支援者はそれを理解し支えることが有用だと考えられる。