発達心理学研究
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展望
スミス・マゲニス症候群の行動問題に対する理解と発達支援の検討
加藤 美朗嶋﨑 まゆみ松見 淳子
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2016 年 27 巻 3 号 p. 243-256

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抄録

スミス・マゲニス症候群(Smith-Magenis syndrome;SMS)は,知的障害を併せて発症する遺伝性疾患で,17番染色体p11.2領域における中間部欠失あるいはRAI1遺伝子の突然変異が病因であり,発生率は約15,000人に1人とされる。多岐にわたる臨床的特徴,睡眠障害,行動問題の発現が特徴とされ,とりわけ発達に伴って発現頻度が上昇する行動問題は保護者や支援者にとって対応の最も困難な課題である。しかし,わが国の特別支援教育および障害者福祉の分野では,その特徴についてほとんど知られてはいない。そこで,本研究では,SMSの行動特性を中心に,行動問題の発現と関連する環境要因,および臨床的特徴,認知機能について概観した。結果は,反抗や攻撃行動,自傷行動,器物破損等が顕著にみられ,これらの発現は周囲の気を引くため,注目引き機能との関連が最も高いことが示唆された。さらに,行動問題が発現する背景として,睡眠障害や末梢神経障害,感覚処理障害,認知特性といったSMSに特有の生物学的要因が関係している。今後は,これら特性の理解と適切なアセスメントに基づく発達支援の構築が求められる。

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© 2016 一般社団法人 日本発達心理学会
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