発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
原著
先行場面における他者からの好意の明示性が曖昧な挑発場面における児童の社会的情報処理様式に及ぼす影響
五位塚 和也
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 27 巻 4 号 p. 418-428

詳細
抄録

本研究の目的は,先行する場面における他者の好意の明示性の有無が曖昧な挑発場面における児童の社会的情報処理様式に及ぼす影響について発達的に検討することであった。小学4年生から6年生までの男女計283名に対して調査を行い,247名を分析対象とした。社会的情報処理の各変数間の因果関係について検討するために共分散構造分析を行った。その結果,他者の好意が明示される条件と明示されない条件の両方に共通して,敵意帰属が友好的目標設定を媒介し,攻撃的行動と抑制的な応答行動の選択に影響を与えるプロセスが示された。また,他者の好意の明示性の有無と対象児の年齢,性別が社会的情報処理の各変数にどのような影響を及ぼしているかを検討するために三要因分散分析を行った。その結果,(1)先行場面において他者の好意が明示された場合,年齢群にかかわらず,敵意帰属と言語的攻撃は減り,非敵意的帰属と友好的目標設定は高まることが示された。(2)高学年になるほど友好的目標設定は低く,攻撃的行動が選択されやすくなることが示された。(3)特に敵意帰属傾向は,他者の好意が明示されている条件において,5年生は6年生よりも敵意帰属を行いやすいことが示された。以上の結果より,児童期では学年が上がるにつれて否定的な社会的情報処理様式を示しやすい一方で,他者から好意を明示される経験によって否定的な社会的情報処理様式が緩和される可能性が示唆された。

著者関連情報
© 2016 一般社団法人 日本発達心理学会
前の記事
feedback
Top