実行機能は,高次の精神機能の一つであり,その形成には長い時間を要し,逆に老化の影響を受けやすいと考えられている。人の一生という時間軸で考えるならば,実行機能は形成されにくく,逆に衰退しやすい機能の一つといえる。また,実行機能は,発達上の様々な障害からの影響も,受けやすいと考えられている。本稿では,この実行機能の形成と衰退の問題を,「反応を抑えること」を中心に検討した。まず,実行機能の特徴について,予測性,可鍛性,関連性という側面から検討した。そして,実行機能の中で,最も基礎の因子と考えられている抑制機能を,他の機能との関連で位置づけ,抑制のタイプを分類した。次に,定型発達と非定型発達でみられる,抑制機能の諸問題を概説した。さらに抑制機能の発達に関わる複数の要因を推測し,その要因との関連で先行研究を紹介した。その要因とは,社会的要因,言語の要因,経験の要因である。それぞれの要因は,抑制機能の形成にとって重要であることを説明した。最後に,抑制機能の発達に関わる,今後の研究課題を考察した。