音韻意識は読み習得の前提であり,音韻意識の弱さがそのつまずきにつながることから,音韻意識の適切なアセスメントは読みの習得支援にとって重要な課題である。ところが日本では標準化された検査が存在せず,研究ごとに異なる課題が用いられてきたことから,本研究では,項目反応理論に基づく日本語音韻意識検査を作成することを目的とした(研究1)。問題はタッピング,抽出,逆唱,置き換え,特殊音節のタッピング(拗音,促音,長音)の7種類の課題からなる。幼稚園年少児~小学校1年生の計875名の結果から,問題ごとの困難度・識別力を算出し,計88項目を項目プールとし,既存の適応型言語能力検査(ATLAN)に実装した。次に,音韻意識と他の言語能力との関係を検討した。研究2では,幼稚園年中児~小学校1年生計163名を対象として横断的に,研究3では年中児25名を対象として縦断的に,音韻意識と平仮名の読み,および語彙・文法の能力との関係を分析した。その結果,これまでの研究同様,音韻意識は平仮名の読みを説明する要因であることが確認されたが,それだけでなく,語彙や文法のような他の言語能力との間にも関連があることが示唆された。さらに,縦断研究の結果から,音韻意識が後の語彙や文法発達を促進することが示唆され,音韻意識を身につけることによって高まったメタ言語能力がそれを可能にしていると考えられた。