2020 年 31 巻 1 号 p. 26-36
本研究の目的は,青年前期,中期,後期及び成人初期にかけての大規模横断調査に基づき,アイデンティティの統合・混乱の感覚の発達傾向と人生満足感との関連を明らかにすることであった。調査対象者は,12–25歳の青年・成人14,428名(女性55.2%)であった(M age=20.55歳,SD age=4.13歳)。まず,年齢群を独立変数,アイデンティティの統合・混乱の感覚を従属変数とした多変量分散分析を行った結果,青年期前期・中期群は,青年期後期・成人期初期よりも統合の感覚が高く,混乱の感覚が低い傾向にあった。次に,アイデンティティの感覚に基づき青年・成人をクラスター分析によって類型化したところ,統合と混乱の高低から4群が抽出され,青年期前期・中期群は統合の感覚が高い群に,青年期後期,成人初期群は混乱の感覚が高い群に分類される傾向にあった。さらに,統合・混乱と人生満足感との相関係数を年齢群別に確認したところ,全ての年齢群において統合は人生満足感と正の関連を,混乱は負の関連を示した。最後に,アイデンティティの類型ごとに青年・成人の人生満足感の得点を分散分析によって比較したところ,統合の得点が高い群ほど人生満足感の得点が高いことが示された。以上を踏まえ,本研究の意義と今後の課題について検討を行った。