発達心理学研究
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ペット型ロボットの疑似飼育は子どもの生物概念を発達させるか
坂田 陽子
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2020 年 31 巻 4 号 p. 183-189

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抄録

デジタル化が進む中で,実際に体験しなくてもデジタル機器やコンテンツから様々な情報を得て,その知識を実体験に生かすことができるようになった。では様々な知識が未熟な時期の子どもはデジタルデバイスから知識を得て,それらの知的な概念を形成できるのであろうか。本稿ではペット型ロボットとかかわることで幼児は生物概念を獲得できるか検討した。研究紹介1では,ロボットに静動の2条件を設けた結果,幼児は静止の場合は無生物,自動の場合は生物ととらえる行動が見られた。研究紹介2では,幼児が1ヶ月間ロボットを生き物の代わりとして疑似的に飼育したところ,初期は生物として接する発話や行動が多く見られたが,2週間で飽きてロボットにかかわらなくなり,生物に関する教育的教示の効果も見られなかった。2つの研究から,ロボットと子どもの接する時間が短時間で,また「動き」の有無が一瞬で入れ替わるような場合はロボットの「動き」は生物を感じさせる。一方,長時間になるとその「動き」はかえって単調で生物を感じさせなくなると考えられた。「動き」が必ずしも生物概念の獲得の一助となるわけではなく,ロボットの動きの質を検討することが重要であると結論付けられた。

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© 2020 一般社団法人 日本発達心理学会
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