発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
原著
写真のショートケーキは舐めたら甘いか?:4~5歳児の写真の表象性理解の発達
木村 美奈子加藤 義信
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 32 巻 1 号 p. 37-48

詳細
抄録

本研究は,幼児期における写真の表象性理解の発達プロセスを探る一環として,写真には視覚以外の感覚属性も備わっていると4–5歳の子どもがみなしているか否かを調べた。実験1では,味覚,触覚,嗅覚,聴覚の4つの感覚モダリティに対応する実物(ショートケーキ,サボテン,バラ,鈴)とその写真を用意し,実物と同じ感覚属性がそれぞれの写真刺激に対しても感じられるか否か(例:鈴の写真は振れば音がするか否か)を尋ねた。実験2では特に色彩の効果に焦点を当てて,ショートケーキ(味覚)とチクチクボール(触覚)のカラー写真とモノクロ写真に対して,実験1と同様の質問を4–5歳児に行った。その結果,実験1では感覚モダリティの違いによって影響を受けるものの,4歳児には未だ写真の図像対象について,その感覚属性の実在視傾向が見られるが,5歳児になるとその傾向が克服されつつあることが明らかになった。この年齢差については,実験2でも同様に認められ,高い再現性があった。実験2ではまた,図像対象の種類にかかわらず,カラー写真の方がモノクロ写真に比べて感覚属性の実在視傾向を有意に高めることがわかった。これまで,写真がその指示対象からは行為レベルで発達的には早くから弁別されることはわかっていたが,一方で4歳児であっても,写真の図像対象の感覚属性を実在視する傾向があるという事実に,本研究は改めて光をあてることができた。

著者関連情報
© 2021 一般社団法人 日本発達心理学会
前の記事
feedback
Top