2021 年 32 巻 2 号 p. 79-90
本研究の目的は,既存の性別違和感尺度を短縮してカットオフ値を設定し,一般小中学生において性別違和感と心理社会的不適応の関連を検証することであった。性別違和感を主訴とするジェンダー外来通院者58名と,小学4年生から中学3年生までの5,221名の一般小中学生から得た大規模データを用いて検討を行った。患者群には子どもの頃を想起して回答を求めた。その結果,性別違和感尺度得点の20点をカットオフ値として妥当と判断した。カットオフ値以上の者は,小学生では,男子0.82%,女子2.02%,中学生では,男子0.60%,女子3.27%だった。さらに,性別違和感が高い者の心理社会的不適応の特徴を明らかにするため,抑うつ,攻撃性,友人関係,食行動異常,自傷行為,非行について,設定したカットオフ値より高い得点を示した小中学生とそうでない者を比較した。その結果,友人関係と食行動異常には交互作用が見られ,性別違和感の高い男子ほど不適応の程度が高かった。その他の項目については性別違和感の高い者がそうでない者よりも不適応の程度が高かった。これら心理社会的不適応が性別違和感のある本人だけの問題ではなく,周囲の対応や関わりが影響している可能性について考察した。