発達心理学研究
Online ISSN : 2187-9346
Print ISSN : 0915-9029
原著
不登校経験者が高校を経由して進路選択に至るプロセス:複線径路等至性モデリングによる学校経験の理解
神崎 真実鈴木 華子
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 32 巻 3 号 p. 113-123

詳細
抄録

本研究の目的は,複線径路等至性モデリング(TEM)を用いて,不登校経験者が高校を経由して進路選択に至るプロセスを明らかにすることである。中学校までに不登校を経験した高校3年生4名に,インタビューを行った。TEMによる分析の結果,協力者は,(1)統制できない状況に直面した結果として不登校になったこと,(2)統制感を得る契機となったのは,小説やオンラインゲーム,エッセイ等との出会いであったこと,(3)その後は高校へ入学し,自然と友人ができる経験をして,(4)学内の関係性を頼りに,これまでの学校生活や自己を変える挑戦をしたこと,そして(5)挑戦する中で進路選択の時期が訪れ,やりたいこと,進みたい場所,なりたい自分についての展望をもって進路を選択したことが分かった。結果をふまえ,統制感を得る契機としてのシンボリックリソース(小説やオンラインゲーム等)の可能性,進路選択における自己基準志向体験(これまでの学校生活や自己を変える挑戦)の重要性について論じた。

著者関連情報
© 2021 一般社団法人 日本発達心理学会
次の記事
feedback
Top